旅行産業研究会が報告書、約款は消費者庁と検討継続、単品販売は方向性示せず

  • 2014年5月22日

 観光庁は5月21日、旅行産業研究会の議論の取りまとめとして「旅行産業の今後と旅行業法制度の見直しに係る方向性について」を発表した。昨年9月から今年3月まで8回にわたって実施した会合の内容をまとめたもの。「旅行業に係る安全マネジメント制度の導入」「着地型旅行普及に向けた商品造成の促進・販売経路の拡大」「標準旅行業約款制度の見直し」「現行旅行業制度の範囲外の論点」の5項目について、意見がある程度一致したものについては方向性を示すとともに、結論が出なかったものについては意見を併記するにとどめた。概要はすでに記事掲載済みだが、今回は各項目の詳細について紹介する。


標準旅行業約款制度、事務レベルで検討継続
法人旅行は約款対象外の提案も


 標準旅行業約款制度の見直しでは、インターネットの普及や中国、韓国などの観光新興国の台頭に伴う海外宿泊施設の仕入れ競争の激化など、旅行業界を取り巻く環境が変化する中、現行の標準旅行業約款で一律に規定することに不都合が生じていると指摘。具体例として取消料や旅程保証をあげ、すみやかに見直し、環境を整備すべきとした。

 観光庁観光産業課長の石原大氏は、今後は消費者利益の保護に留意しつつ、商品内容や契約相手などに応じて弾力的に対応できる約款制度を構築していくとし、観光庁と消費者庁で事務的レベルで「密度を深めて議論していく」とした。検討開始のタイミングは未定だが、観光庁としてできるだけ早く実施できるよう、消費者庁に働きかけているという。

 また、法人間の旅行契約については、個人と比べて契約者を保護する必要性が薄いことや、出張手配の包括契約や国際会議のイベントなど契約規模が大きくなる場合、宿泊料の取消料のタイミングなどで旅行会社の負担が大きくなると指摘。現行の旅行業約款制度の対象外とする、または消費者に適用する標準旅行業約款と異なる約款を設けることを提案した。対象となる旅行内容や法人の範囲も含め、今後慎重に検討していく方針だ。

 さらに、報告書では個別約款の活用も示唆。旅行形態の多様化が見込まれる中、一律に標準旅行業約款のみで対応することは困難であるとし、消費者保護に配慮した上で個別約款を定め、説明を丁寧におこなうことで消費者の選択を促すような方式の採用も考えるべきとした。

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