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旅行産業研究会が報告書、約款は消費者庁と検討継続、単品販売は方向性示せず

  • 2014年5月22日

素材単品販売は方向性示せず
インターネットトラブル防止でガイドライン策定へ

 インターネット取引の増加や海外OTAの台頭への対応では、素材単品手配とインターネット取引でのトラブルの対策について検討をおこなった。

 素材の単品販売については、営業拠点が海外にある海外OTAは日本の旅行業法の適用を受けないことから競争条件が不公平という課題が指摘されていた。現行の旅行業法では、宿泊や運送サービスのみを手配する場合は民商法上の代理、媒介、取次ぎ行為と位置づけられるため、旅行業者は手数料を収受することはできるが販売価格の決定権はなく、自由な価格設定ができないのが現状だ。旅行業者の中には自由な価格設定のため募集型企画旅行として商品を造成しているケースもあるが、旅程保証や特別補償などが発生するため実態にそぐわない場合がある。

 こうした事態を踏まえ、研究会では自由に値付け可能な新しい旅行区分を創設する案と、素材単品販売を旅行業法の対象から除外する案の2案の提示。石原氏によると、議論内で方向性をまとめることは難しかったため、報告書では出された意見の併記にとどめた。今後検討を継続するかは現時点では未定だという。

 新しい旅行区分の創設では、素材単品販売を募集型または受注型企画旅行の範疇に位置づけ、旅程保証や特別補償、キャンセル規定の適用を一部除外するなどの特例を設けたカテゴリーを新設する案が出された。しかし、新カテゴリーと現行の募集型、受注型企画旅行の明確な違いを消費者に提示できるかといった課題や、旅程保証など消費者保護の内容を後退させることが問題ではという懸念の声があがった。

 また、現行の手配旅行で手数料の設定に幅をもたせ、取扱状況に合わせた柔軟な対応を提案する意見もあがったが、どういう手配の場合に手数料を高くするかなど、消費者に条件をいかに明確に示すかという課題も出た。

 素材単品販売を旅行業法の適用外にし、自由な値付けを可能とする案では、IT化にともない決済からサービス提供までのタイムラグがなくなりつつあるため、消費者保護の観点からも旅行業法で規制する必要性が薄れていることや、素材単品販売の自由化で市場の裾野が拡大し、国内観光産業の活性化が期待できる点が指摘された。

 一方、どこまでを素材の単品販売とするかの線引が難しいという意見や、旅行業のノウハウがない事業者が取り扱えることから消費者の利益を損なう恐れがあるとの懸念もあがった。これを踏まえ、除外対象をOTAの取り扱いが多い宿泊施設に限定する案が提示されたが、販売業者の規制が無い点は課題として残った。

 インターネット取引上のトラブルへの対策では、旅行業法の適用の有無や問い合わせ先の電話番号を明示するなど、航空券や宿泊施設の手配に関するウェブサイトの表示について、ガイドラインを策定する方向性が示された。海外OTAや場貸しサイトにも適用を求めていく方針。観光庁では今後、JATAが2010年に策定した「インターネットを利用した旅行取引に関するガイドライン」をたたき台として、旅行会社やOTA、消費者団体などと意見交換を実施し、消費者庁と協議の上ガイドラインを策定していく予定だ。

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