かたちにとらわれない世代交代、揺るがぬ信念-ライオンズ旅行企画が育てる"しなやかな組織"

祐婦子 氏 現在は人材育成を重点課題と捉え、トップダウンではなく、社員一人ひとりが自分で考えて動ける組織づくりを目指しています。旅行業にこだわらず、“好き”や“やってみたい”という気持ちを原動力に、新たなサービスや市場にも柔軟に挑戦していきたいと考えています。
毎年、私はスペインを中心に10日〜2週間ほど現地に滞在しているのですが、これはプライベートを楽しむと同時に、仕事にも直結しています。特に海外手配では、現地の交通事情やトランジットの流れなど、自分の体験がそのままお客様への提案に活かされます。こうした自分の“好き”や“やってみたい”を大切にすることが、最終的に仕事の価値にもつながると実感しています。
将来的には、勤続年数に応じて、たとえば私が大好きなスペイン・バスク地方の「バル巡りツアー」など、その人の好みに合った旅行をプレゼントできるような制度もつくっていきたいと思っています。旅に関わる仕事をしているからこそ、まずは私たち自身が“旅を楽しめる”ことを大切にしたい。その体験が、きっとお客様への提案にもつながっていくと考えています。
晃寿 氏 年間休日も増やしましたが、それでも会社は黒字で回っています。社員には「自分たちの会社だ」と思って、どうしていきたいか考えてほしい。今後は幹部が相談して旅行以外の分野に広げても、それはそれでいいと思っています。
祐婦子 氏 とにかく「楽しいから会社に来たい」と思ってもらいたい。そのため社員とは年に1回1on1の面談を行い、一人ひとりがどんなことにやりがいを感じ、どんなことに不満や課題を感じているのかをヒアリングしています。そうした声をもとに、働き方や関わり方を少しずつ見直し、より良い環境づくりにつなげています。実際、労働環境は少しずつ整ってきていて、業務の効率化や働きやすさも前進していると感じています。無理なく、でも前向きに挑戦できる土壌を育てることが、会社としての持続的な成長につながると信じています。
将来的には、旅行の枠にとらわれず、「楽しい」「学びになる」と感じてもらえるような体験を軸に、新しいサービスや市場にもチャレンジしていきたいと考えています。現場の気づきや社員の声から、これからの可能性をどんどん広げていけたらと思っています。

晃寿 氏 旅行業界には、その場しのぎで経営している会社も少なくないと感じています。私が若いころはとても儲かっていた会社も多かったのですが、今ではほとんど残っていません。当社ではUSJの貸し切りを7000万円で実施したこともありますが、そういった大きな案件にも対応できる力を、会社として持っておかないといけない。利益が出たら蓄財して、片手に資産を持ちながら経営を続けていくことが大事だと思います。欲を出しすぎず、ご縁を大切に、誠実にやっていくことが、結果としてうまくいく方法だと感じています。
祐婦子 氏 私たちは、「旅を通じて人と人、地域と人をつなぐ」ことに誇りを持っていて、観光には社会を元気にする力があると信じています。お客様のニーズが多様になっている今、ただパンフレットを読むだけではなく、自分たちのリアルな体験をもとに提案できる力がますます大切になってきています。どれだけ技術が進んでも、旅はやっぱり“人が人に届けるもの”。人の想いや温度があるからこそ、心に残る旅になると思います。そして私たちが扱っているのは“モノ”ではなく、“体験”。簡単に売れるものではないし、良い商品をつくるには、時間も手間もかかります。でもそのぶん、お客様にとって一生の思い出になるような旅を届けられたときの喜びは、何にも代えがたい。今後も、業界の皆さんと一緒にこの仕事の魅力や価値を大切にしながら、より良い観光の未来をつくっていけたら嬉しいです。