かたちにとらわれない世代交代、揺るがぬ信念-ライオンズ旅行企画が育てる"しなやかな組織"
京都を拠点に、地域密着型の団体旅行を中心に事業を展開する株式会社ライオンズ旅行企画。現在は創業38期を迎え、次の節目に向けて体制づくりや次世代の育成にも力を入れている。同社のこれまでの歩みと今後の展望について、代表取締役の下平晃寿氏と、取締役として経営に参画している次女の下平祐婦子氏に話を伺った。

下平 晃寿 氏 会社を立ち上げたのは昭和61年です。それまでは京阪津ツーリストに10年ほど勤めていました。33歳のときから支店を任され、本社に戻ってからは、より自分らしい営業や経営のスタイルを追求したいという気持ちが強くなりました。37歳の時、当時の後輩や部下と5人で独立を決意し、ライオンズ旅行企画を設立しました。現在は30名弱のスタッフが在籍しており、男女比は半々くらい。娘が入社してからは女性スタッフが増え、組織としてもより多様な価値観を取り入れられるようになってきています。
下平 祐婦子 氏 私は高校生の頃からアルバイトとして会社の手伝いをしていましたが、正式に入社したのは24歳のときで、海外手配を担当することになりました。小さい頃から父に連れられて旅行にはよく行っていたので、旅行は身近なものでしたが、仕事にするつもりは正直ありませんでした。自由に生きたいという思いから、士業の勉強などもしていましたが、会社を手伝う中で、コロナ禍をきっかけに管理体制を見直す必要性を感じて、本格的に経営に関わるようになりました。現在は管理本部全般と海外手配を担当しています。
晃寿 氏 当社の業務は国内観光が中心で、会社や自治体、学校などの団体旅行を多く手がけています。創業当初から日本旅行の特約店として、JTBや近畿日本ツーリスト、JALやANAの端末を導入し、大手と同じレベルの手配が可能です。その上で、地域に根ざしたきめ細かい対応ができるのが強みです。会社を作ったときから、将来的には人数も拠点も増やしていきたいという思いがあり、あえて社名に「京都」を入れませんでした。今は愛知や滋賀にも拠点があります。当時は「国際ロータリー」という旅行会社があったので、それならば我々は、と「ライオンズ」という名前にすることとしました。現在は私自身もライオンズクラブに関わっています。海外手配は以前から担当者がいたのですが、件数は少なかったです。次女が来てから、業務渡航などの海外案件が増えました。
祐婦子 氏 私が担当しているのは主に海外の業務渡航です。単純な往復から世界一周まで、幅広い案件に対応しています。また、個人旅行や団体旅行もあり、「記念になる旅にしたい」「幹事として親族旅行を成功させたい」といった想いに応えることも多いです。パンフレットにないプランを、一つひとつ丁寧に形にするのが、私たちのスタイルです。
晃寿 氏 社内のコミュニケーションやチーム力を高めるために、定期的な社内懇親会や研修旅行を実施しています。最近では、社員会の名称を「獅友会(しゆうかい)」に改め、社員の中から会長・副会長を選び、企画を進めながら、日帰りや一泊の気軽な旅行を通して社員同士の交流を深めています。神戸や四国、伊勢など、参加しやすい距離感のプランを工夫しており、企画すると多くの社員が集まってくれる場にもなっています。

祐婦子 氏 今年3月には、三重県伊勢市の老舗すき焼き店「牛銀」にて、2万円のコース料理を体験しました。私たちは普段、お客様に「美味しいもの」をご案内していますが、実際に味わったことがなければ、その魅力を本当の意味で伝えることはできません。一流を知ってこそ、自信を持っておすすめできる。一流の料理、接客、空間設計まで含めて“本物の価値”を自分たちの肌で感じることで、「なぜ高価格でも選ばれるのか」という視点を持つことができました。当社では「安かろう悪かろう」の商品は扱わないという方針のもと、スタッフには経験を通じて価値を理解し、それを言葉と提案に変えて届けてほしいです。
また、所長クラスの幹部が集まる「所長会」では、2月に台湾へ行きました。普段は国内添乗が中心のスタッフに対して、eSIMやモバイルチェックイン、最新の入出国手続きなどを実体験することで、知識と感覚のアップデートを図りました。販売経験があっても実際に訪れたことがないケースは多く、こうしたリアルな体験が「行った人だからこそできる提案力」につながると考えています。お客様に安心して海外旅行を楽しんでいただくためにも、私たち自身が実際に体験し、知識を確かなものにしていく姿勢を大切にしています。