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【新春インタビュー】ウィズコロナに向けて前へ進むのみ-日本政府観光局理事長 清野智氏

2023年はサステナブル、アドベンチャー、ラグジュアリーがキーワード

 日本のインバウンド振興の推進役を担う日本政府観光局(JNTO)。世界的に観光需要が蒸発してしまったコロナ禍中も、観光再開に備えてさまざまな取り組みを続けてきたという。理事長の清野智氏にようやく再開の入り口に立てた2023年にJNTOが目指すところを伺った。(聞き手:弊社代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人 岡田直樹)

JNTO理事長の清野智氏

-はじめに2022年の振り返りからお願いいたします。

清野智氏(以下敬称略) 10月に水際対策が緩和され個人の外国人観光客の入国も解禁となったことは日本のインバウンドにとって大変重要な一歩でした。一方で、タイや韓国では水際の緩和措置がはるかに早くから実現していたことを考えれば、手放しで喜べる状況ではありませんでした。国内外の観光の関係者の皆様から「一体いつになったら日本は水際対策を緩めて国を開くのか」「早くインバウンドを再開してほしい」といったご意見をいただくこともありました。

 我々は10月11日の水際対策の大幅緩和を前向きに捉え、積極的にプロモーション活動を行うこととしています。第8波の拡大といったさまざまな懸念材料はあるにしても、ウィズコロナを本気で考え、感染症を乗り越えて経済を前向きに動かしていかなければなりません。これはインバウンドだけに限らず、国内旅行や飲食業といった様々な業界において、10月11日の緩和を区切りとして前進していかなければなりません。国際的に考えてもそれぞれが国境を開き合い、皆で前に進みましょうという段階なのです。

-10月11日の大幅緩和以前からJNTOは施策を打ってきたと思います。どのような取り組みをしてきたのでしょうか。

清野 コロナ禍中から「早く日本に行きたい」「いつから行けるのか」といった数多くの問い合わせがある一方で、「日本に行きたいが、いつまでも行ける見通しが立たないのなら他の国に行く」という声も多く聞こえてきました。そこで、JNTOとしてはとにかく日本の存在感をつなぎとめていくための活動を展開しました。日本が美しい自然と四季に恵まれ、いにしえから続く歴史と文化があり、清潔で安全、親切な国であるということを、本部および世界25ヶ所(12月17日現在)にある在外事務所を通じて情報発信し続けました。もちろん日本におけるコロナの最新状況や感染症対策の情報もウェブサイトやセミナー等を通じて発信し、安心して日本で旅行ができることを紹介してきました。

 同時に各事務所がその国と地域に合った話題作りに取り組み、日本の存在感の維持に努めました。国によってはクイズキャンペーンで賞品を提供したり、日本の観光地を案内するライブ動画を現地側で生配信したりもしました。各地で旅行関連イベントがリアル開催されれば積極的にブースも出展しました。

-本部主導で日本のイメージ訴求を絶やさない努力を続けると同時に、各事務所が各マーケットに適した対応策を打ってきたわけですね。

清野 もう1つ加えれば、国境を超えた活動が難しい状況で取り組んだのが日本各地の地方自治体、DMOやインバウンド関連業界の皆様との意見交換や連携強化です。JNTOの海外事務所とオンラインでの意見交換やセミナー等を通じ、海外の最新の情報や旅行者のニーズの変化についてお伝えしたり、また我々が皆様から意見や情報をいただいたりすることによって、連携が確実に強化されたと感じています。コロナ禍を奇貨として、目に見えない絆を強化できたのがこの3年間の成果と捉えています。またJNTOとインバウンド関連業界の皆様との関係だけでなく、官と民、地域と地域、DMO同士、さまざまな連携が強化されました。

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