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【新春インタビュー】ウィズコロナに向けて前へ進むのみ-日本政府観光局理事長 清野智氏

2023年はサステナブル、アドベンチャー、ラグジュアリーがキーワード

-10月の大幅緩和以降のインバウンドの動きや今年の需要動向について、どのように見ておられますか。

清野 訪日外国人旅行者数は9月に月間20万人台だったのが10月には50万人まで増えました。10月11日からの個人旅行の緩和により、実際に旅行者が増加しはじめたのは10月後半以降であることを考えれば、およそ半月で前月の2倍の人数が来訪したことになります。そしてこの勢いは今後も続くと見ています。冬はスキー・スノーボードといったウィンタースポーツを目的としてオーストラリアをはじめ、各国からの来訪が見込まれます。

 一方で中国市場がまだ極めて不透明な状況にあることや、航空会社や空港等における人材不足の問題もあり、不安定要素が多く、今後の見込みを立てることは難しい状況です。

 また、岸田政権は新経済政策の中で訪日外国人旅行消費額5兆円の目標を掲げています。過去最高だったのは2019年の消費額が4.8兆円です。この消費額がコロナ禍でいったんゼロになった。そこから再び5兆円を目指すことはハードルが高く、並大抵ではありませんが、それに向かって様々な取り組みを行っていくこととしています。

 2023年に期待する要素としては、札幌で開催するアドベンチャー・トラベル・ワールドサミット(ATWS)があります。2021年の開催予定がコロナ禍でオンライン開催になってしまったため、改めて札幌でリアル開催することになっているのですが、日本が本格的にインバウンドの再開に動いていることをアピールするチャンスであり、訪日外国人旅行者増加のきっかけにもなるイベントとして期待しています。

-今年の施策やプロモーション計画について教えてください。

清野 JNTOとしては今年度から3つのテーマについて重点的に取り組んでおり、来年度も継続していきます。

 1つ目はサステナブルツーリズムへの取り組みです。コロナ禍を経て、サステナブルツーリズムへの関心は世界で高まっており、非常に重要な視点であると考えています。今後国内において持続可能な観光を育てていくことは欠かすことのできない取り組みとして重視しています。

 2つ目は先ほども触れましたが、アドベンチャー・トラベルに力を入れていきます。アドベンチャー・トラベルとはアクティブティ・自然・文化体験のうち最低2つの要素を含む旅の形態で、日本には魅力的な素材と舞台が、全国、特に地方にたくさんあります。いままであまり気づかれなかったところですが、日本にはアドベンチャー・トラベルのコンテンツはたくさんありますので、そうした情報を海外に発信していきたいと思っています。

 3つ目は高付加価値旅行、いわゆるラグジュアリートラベルです。世界の富裕層が対象となる分野ですが、日本ではまだ受け入れ体制が十分ではありません。特に指摘されるのがラグジュアリーホテルの不足です。日本人の感覚ではラグジュアリーなホテルもたくさんあると思うのですが、ラグジュアリートラベルの専門家は、まだまだ不十分と言っています。一方で世界のラグジュアリー層を本気で受け入れていくなら、日本人のメンタリティーから変えていく必要があるかもしれません。日本は平等を重んじる傾向がありますので、ラグジュアリートラベラーが求める特別待遇や特別感のあるサービスを限られた方々に提供することの意義について、理解を得ることが難しい面があるのも事実だと思います。皆さんの理解増進を図る必要があります。

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