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【ホテル総支配人リレーインタビュー】第16回 ANAインターコンチネンタル石垣リゾート 総支配人 秋間友氏

  • 2022年8月26日

ホテル業界が取り組むべき人材問題
本気で待遇改善を図らなければ未来はない

-今後はインバウンド復活への期待も高まります。

秋間 石垣島を訪れる観光客のインバウンド比率は19年でも2%。当ホテルもそれを上回る程度でした。インバウンドの販路を確保していくことは大切ですし、英語圏や中国語圏のお客様にも対応できる人員体制を整えておくことは重要です。しかしながら、現状は多様化する日本人のお客様のニーズに寄り添った策を講じることにフォーカスする必要があると感じています。

-直販以外ではどの販路の販売が多いですか。

秋間 昨年は国内OTA、特に高級宿泊予約の「一休.com」が強かったです。ただし今年に入ってからはJTBやHISといった旅行会社の販売が伸びています。昨年まではホテルを含め、航空券、レンタカーをお客様が単品で手配すれば問題なく旅行できたのが、今年はレンタカー不足の影響もあって、旅行商品の方が予約を取りやすい傾向が背景にあるようです。

-ホテルの最大の「売り」は何でしょうか。
「ベイウィング」のエントランス

秋間 「人」だと言いたいですね。しかし実際には一番課題がある部分でもあります。石垣島は人口5万人。学校は高校までしかなく、若者の9割は高校卒業後に島を出て帰ってきません。残る1割は家業の農業・漁業を手伝うことが多く、観光産業に入る若者はごく僅か。当ホテルの従業員も7割近くが内地からの人材です。

 彼らのなかにはホテルの仕事に魅力を感じてというより、石垣島や八重山諸島の自然に魅せられて来ている者も多くいます。ですからサービスの基本等のトレーニングをよりきちんと行う必要がある。1泊20万円のホテルのサービスを垣間見たり体験したりする機会が、島で暮らしていると圧倒的に少ないのです。姉妹ホテルとの関係を利用して、従業員にホテル宿泊体験をさせるような取り組みも実現したいと考えています。

-人材の採用に関してはどのような工夫を行っていますか。

秋間 待遇の改善を重視しています。私も赴任して驚いたのですが、全ての物品に輸送コストが上乗せされるので、スーパーへ行けば東京より値の張る商品が多く、ガソリンも光熱費も高い。家賃も1Kが6万4000円と那覇以上です。にもかかわらず、給与規定は「田舎は安くていい」という昔ながらの発想のまま。「沖縄だから、離島だから給料は安くていい」を続けていたらホテル業界に未来はないと思います。

 私は従業員の給料を上げるためにホテルオーナーやIHGホテルズ&リゾーツ側含むステークホルダーと1年間にわたって協議を重ねてきました。詳細なデータを示しつつ説明を重ねた結果、納得してもらうことができ、今春から大卒の初任給を上げることができました。成果もすぐに出て、求人のエントリー数はこれまでの6倍に増え、面接を通して優秀な人材が増えた手応えも感じました。ステークホルダーにはとても感謝しています。

-そもそも日本のホテルは客室料金も従業員の給料も安すぎます。

秋間 何とかしなければ未来はありません。人手不足はさらに深刻化します。かといって外国人労働力は日本で働きたいと考えていない。働きたい国のランキングで日本はベスト20位にも入らないはずです。

 ホテルビジネスが純粋に不動産投資業として見られがちな面がありますが、これをもう一度見つめ直して、オーナーサイド、そしてIHGホテルズ&リゾーツとも覚悟を持ち長期的な展望に立って交渉する必要があると思います。長期的なアセットとして「人」の価値が大きいことを、本気で説明すれば分かってもらえる可能性はあります。

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