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価格上昇傾向の世界に取り残されたままでいいのか?-亜欧堂 堀口洋明氏

  • 2022年6月10日

円安のメリットをADRアップに活かせるか

亜欧堂 デフレ傾向が続いている日本では価格を上げることに対して抵抗感が強いようです。円安傾向もあるので海外向けに高く販売することが可能かどうかを考えています。公正取引委員会の動きもあり、必ずしもレートパリティ(全ての販売経路で価格を揃えること)の必要性がなくなってきたので、国別に価格を変えることは難しくてもチャネルごとに変えることができるかどうかということです。

STR グローバルチェーンはレートパリティを守りつつ自社のロイヤリティプログラム(会員制度)の価値を高めていくという戦略をとっているというのがあって、チャネル毎に価格を変えるという考えはないと思いますが、歴史的な円安の中で今の日本はバーゲンセール状況なのでADRを上げていくには良いきっかけになるのかもしれません。

亜欧堂 例えば一番安い部屋は狭いので海外のマーケットに適した部屋を出しましょうという文脈であれば、チャネル別に販売価格を変えることが成立するかもしれないとは思っています。

STR 市場時計の概念で稼働率が上がるまでADRは戻せないと思っている国内のホテルが多いように思いますが、市場時計の概念がコロナ禍ではもう当てはまらなくなってきているので、戦略的にアフターコロナの中でどこまで速く2019年に近づけるかと考えた時に、円安を利用した戦略の一つとしてチャネルごとに価格を変えるというのは、日系の宿泊施設に関しては機能する部分もあるんじゃないかと感じました。

まとめ

 いかがでしたでしょうか。

 世界と比べると日本はコロナ禍以前から稼働率を優先しADRを抑える傾向にあったといえますが、コロナ禍によってその傾向がますますはっきりしているようです。

 インバウンドの受け入れ再開や円安といった好材料もあり、今がADRを上げる好機だと言えるのかもしれません。様々な要素を勘案しながら少しでも良い方向に進めていただければと思っています。

堀口洋明
ホテルマネジメントをサポートする/株式会社亜欧堂 代表
フルサービス・リミテッドサービス・リゾート、国内系・外資系、宿泊・宴会・レストラン部門を全てマネージャーレベルで経験し、亜欧堂設立後は経験と理論を両立したコンサルタントとしてホテル業界の支援を行っている。