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価格上昇傾向の世界に取り残されたままでいいのか?-亜欧堂 堀口洋明氏

  • 2022年6月10日

STR 世界的なADR上昇には、インフレに加えて4つの要因があります。

1. 自粛期間中に貯蓄した個人トラベラーが以前よりも高いところに泊まれるうちに泊まっておこうという需要の顕在化
2. 個人レジャーから需要が戻るため、比較的(料金を調整しやすい)イールダブルなマーケットから回復している
3. 人材確保の困難さから稼働の上限を儲けないとならないためADRを上げざるを得ない
4. 需要がリゾート・フルサービスホテルなど(高単価のカテゴリー)から回復している

日本だとあまり解雇が多くなかったので、少なくとも(1、2、4の)3点に関しては日本でも全く同じことが言える状況です。

亜欧堂 日本の現状でも稼働率そのものはビジネス客を主なターゲットとするリミテッドサービスの方が高い傾向にありますが、2019年との比較で見ると確かにリゾート・フルサービスホテルの方が回復していますね。

STR ビジネスが戻ってきていることは間違いないと思いますが、世界と比較して日本の方がビジネスの戻りが早いかといえば、稼働状況では日本も世界もそれほど変わらないです。

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日本の稼働率は高すぎる!?

STR 2019年の時点で稼働率が60%台で高い方というのが全世界的にはスタンダードで、日本のように国全体で80%を超える稼働率というのはかなり高いです。特にアメリカではADRを上げるためにどの位の稼働率が適切なのかを考えて80年代からADRを上げることでRevPARの成長を続けています。

亜欧堂 やはり日本が突出して稼働率が高いですね。稼働率を抑えて販売価格を上げていくべきだなと改めて思います。

STR 日本の場合はそもそも事業計画の段階で稼働率を高く組んでいるのですが、パンデミックで一回その事業計画もリセットせざるを得ない状況になり、稼働率はこの程度だけれどもADRはここまで上げるのでRevPARは成長していけるという示し方をできる宿泊施設が増えることが重要だと思います。

亜欧堂 稼働率というより数量を抑える、つまり薄利多売より価格を高めにして数は少なくても良い、その方が効率的だということですよね。今ある施設には稼働率を抑えるという表現でピッタリだと思うのですが、開発側から見ると低めの稼働率の分余る部屋の建設費用が無駄じゃないかという議論は出てくるように思います。

STR ホテルの開発はコロナ禍前と比較すると、100室ビジネスホテルといった画一的な案件が限定的になってきており、自治体が助成するような小規模な案件から、大規模資本による大型案件まで、多様化してきているようです。

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