熊野古道の宿泊施設不足に挑むー日本ユニスト 山口和泰氏、大崎庸平氏

日本の将来は地方の経済が創る
高齢化・人口減少下の地域創生を可能にする無人運営

-宿泊施設の内容を説明してください。

大崎 中辺路ルート最初の集落、高原地区に空き家を改修して「SEN.RETREAT TAKAHARA」を開業しました。和歌山の木材を使い温かみのある施設に仕上げています。一棟貸しの無人運営で、食事は宿泊客自身でBBQやしゃぶしゃぶを楽しむスタイルです。

-無人運営の仕組みを教えてください。

山口 オンラインで予約をした宿泊客に自らチェックインしてもらいます。決済は事前決済が基本です。チェックインは2段階で、まず宿泊施設近くにある電話ボックス型の「チェックインボックス」に設置されたタブレット端末に表示されているQRコードを読み取って、手続きをします。次いで別のタブレット端末でリモート待機しているコンシェルジェ・チームにコンタクトして、本人確認を済ませると施設に入るための暗証番号が通知されます。

 予約時に素泊まりか1泊2食かを選択しているので、必要な食材等が田辺市の提供事業者から事前に届いています。宿泊施設は完全に無人運営で、スタッフと直接接することはありません。

-中辺路ルートには高原地区以外にも施設を計画していますか。

山口 最終的には全部で4施設を考えています。2軒目は高原地区から4時間から5時間の距離にあり、雲海や美しい星空で知られる宿場、近露に、コンテナハウス「SEN.RETREAT CHIKATSUYU」を4月に開業します。ルート上の2泊目の宿泊施設です。

 3泊目の宿泊施設は渡良瀬温泉近くに予定しています。しかし現状、宿泊施設不足が深刻でない地区なので、開業は今秋以降の予定です。先に開業を目指すのが4泊目となる小口地区で、こちらは今年7月から9月くらいには開業したいと思っています。

-宿泊施設の客層ターゲットは。

大崎 オフシーズンの活性化も目指すためトレッキング未経験者も取り込む考えで、女性グループや子供連れファミリー層も重視しています。一棟貸で最大10名収容ですが、女性の3名から5名のグループや4、5名の家族連れ、2世帯共同での利用もあります。直近では夫婦や家族のみの少人数利用も増えています。

-販売戦略はどのようにお考えですか。
大崎氏

大崎 熊野古道の魅力を日本市場に認知させるのが重要です。インバウンド人気が非常に高かった熊野古道ですが、国内市場には魅力が伝わり切っていません。そこで、単にトレッキングや巡礼だけでなく、リトリートという文脈で"蘇りの道・熊野古道"の価値を訴求しています。従来のトレッキングのために熊野古道を訪れてもらうコミュニケーションだけでなく、日常をリセットし家族や友人とSEN.RETREATの宿泊を楽しみ、自然の中で寛ぐリトリートを体感するために熊野古道を訪れるという宿起点のコミュニケーションも仕掛けています。

-個人宿泊客以外の販売戦略についても何か考えていますか。たとえばオフサイトミーティングでの利用も考えられますが。

山口 オフサイトミーティングには取り組む計画があります。一般社団法人すごい会議と連携し、1泊2日プランを考えています。1日目はすごい会議のコーチによる問題解決会議を行い、夜は地元料理を楽しみつつ振り返りミーティング。2日目は雲海観賞と朝食の後、5時間ほどのガイド付きトレッキングでチームビルディング、という構成でプランを立案中です。企業のボードメンバーを対象にした10名以内の需要などに期待できると見ています。

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