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意欲の高い外国人人材の受け入れを支援、観光需要のV字回復に備える―人材派遣のアステージ代表 酒井尚志氏

  • 2021年4月15日

日本語学校とインターンシップにも注力
宿泊業での外国人特定技能の広がりに期待

 観光産業への人材派遣や転職支援を中心に、海外からのインターンシップ受け入れ、日本語学校の経営なども手掛けるアステージ。観光産業の人材課題の解決に貢献しているほか、日本で働く外国人の人材育成でも大きな役割を果たしている。昨年来、コロナ禍によって事業に大きな影響が出ているが、同社社長の酒井尚志氏は、コロナ収束後を見据える。外国人を含めた観光人材の現状は。今後の取り組みや展望と合わせて話を聞いた。

-まず、酒井社長のご経歴を教えてください。
アステージ代表取締役社長の酒井尚志氏。インタビューはオンラインで実施した。

酒井尚志氏(以下敬称略) 2001年に食品流通業界からアステージの前身であるトラベラーに入社し、管理部門で仕事をしていました。その後、2003年にトラベラーの人材サービス部門は別会社になりましたが、そのままその会社に転籍。2006年に現在のアステージに社名が変更され、2009年にはMBOにより私が経営を引き継ぎました。

 旅行業界は、米同時多発テロやリーマン・ショックなど外部要因に左右されることが多かったので、人材サービスもリスクヘッジのために他の業界に広げようとしましたが、人材派遣会社が乱立し、競争も激しく、また、トラベラー時代から旅行業界で長く経験を積んできた社員がほとんどでしたので、やはり餅は餅屋ということで、本業の旅行業界への人材派遣サービスに立ち返りました。

-旅行業界への人材派遣に加えて、宿泊施設などへの外国人人材の紹介事業も行っています。その事業を始められた経緯をお聞かせください。

酒井 私が経営を引き継いだ2009年当時は、まだ訪日観光客はそれほど多くありませんでしたが、韓国などからワーキングホリデー制度を利用して日本で仕事をする需要がありました。韓国のエージェントの方から、そういう人たちの日本でのサポートを一緒にできないかと相談を受け、アステージの本業である日本の宿泊施設への紹介を始めました。翌年の2010年には台湾からのワーキングホリデーのサポートも始めました。

 当時は、地方の宿泊施設は人材不足で、日本人パートやアルバイトも見つからない状況でした。そのなかで外国人人材を紹介したわけですが、最初は日本語にも不安があったため、こちらから採用をお願いするという立場でした。しかし1年くらい経つと、彼らは一生懸命働いてくれるため、戦力として評価していただくようになりました。2011年には韓国と台湾と合わせて40人ほどを紹介しました。

 その後、今度はインドネシアからの留学生のアルバイト先を紹介する機会に出会いました。そのつながりで、インドネシアのジョグジャカルタの人と知り合いになり、現地で日本語教育のサポートを行うことになりました。ジョグジャカルタは世界遺産の観光地ですので、日本語ガイドを育成すれば、日本人観光客の誘致にもつながるのではないかと考えました。

 ジョグジャカルタは観光の街ですので、観光教育を行う大学も多く、日本のホスピタリティを学びたいと希望する人も多いことが分かりました。ただ、日本での受け入れ機関がない。そこで、アステージとして、日本で受け入れてくれる宿泊施設を開拓することになりました。最初に受け入れたのは2013年で、インドネシア学生5人を3ヶ月間のインターンシップとして北海道の宿泊施設に紹介しました。日本語を学ぶ学生とはいえ、言葉の壁があるため、洗い場や清掃など簡単な作業でしたが、宿泊施設の方からは高い評価をいただきました。

 2年目からは6ヶ月間のコースも設け、10人が来日。3年目は30人、4年目は50人から60人、コロナ前の2019年には年間120人ほどを受け入れるまでに成長しました。

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