公認会計士が教える、恥をかかない知っておくべき会計知識 vol.2 ー ゼロベース代表 渡邊勇教氏寄稿

会計における集計方法
基本は「3つのルール」の使い分け

3つルールはどう使い分けられるのか

 実は3つのルールを会社が独自に判断をして、好き勝手に使っていい、というものでありません。この3つのルールの上に「費用と収益は対応させるべき」という「費用収益対応の原則」というルールがあります。もし、現金主義だけで会計処理をした場合、先ほどの例で言いますと、売上は入金時の3月に計上されることなり、それにかかった人件費や清掃費用は、支払ったタイミング(例えば、給料は4月分を5月に支給しているイメージ)で費用処理されることとなります。

 さてここで具体的なイメージとして、以下をご紹介いたします。会計事実が4月に発生(内訳:売上3,000,000円、人件費1,200,000円、清掃費用400,000円)し、入金が売上4月、支払いが人件費5月、清掃費用6月を想定しています。

(現金主義で会計処理されたイメージ)

4月5月6月
売上高3,000,000円
人件費1,200,000円
清掃費用400,000円
営業利益3,000,000円▲1,200,000円▲400,000円

 上記を見ていただくとわかるかと思いますが、一つの会計事実に対して、月別に算定される利益がバラバラです。これは費用と収益が対応している状況にない、ということになります。そのため、原則は、費用と収益がしっかり対応する「実現主義」と「発生主義」で会計処理がなされることが重要になってきます。

(実現主義と発生主義で会計処理されたイメージ)

4月5月6月
売上高3,000,000円
人件費1,200,000円
清掃費用400,000円
営業利益1,400,000円0円0円

 これでスッキリしました。あくまで4月の収益(売上)に対応する費用は、4月の費用なのです。

 現実は、4月のみ収益や費用が発生することはなく、毎月何かしらの収益と費用が発生しているため、上記のようなことにはならないかと思います。仮に毎月の取引のすべてを現金主義で会計処理されていると、1年間の数値の合計である決算書を見れば、多少はわかるかもしれませんが、その月の取引によって利益が出ているのかがわかりません。なお、お客様から事前に受け取った代金は、「前受金」として貸借対照表の「負債」として会計処理されます。もし宿泊されなければ返金の可能性があるため、会社にとっては負債となります。

>>> 3つのルールよりも大切なこと