豪州、次なるステップアップへ足場固め、パース線復活に期待

  • 2018年5月30日

東海岸以外の各州でも高まる日本市場開拓の意欲

(右から)TA本局インターナショナル・エグゼクティブ・ジェネラルマネージャーのフィリッパ・ハリソン氏とTA日本局長の中沢祥行氏

 航空座席供給力の大幅な拡大により旅行需要が大幅に増加した16年に対し、17年はやや控えめな伸びにとどまったオーストラリア。それでも4年連続の増加となり、さらなるステップアップに向けての足場固めが着々と進んでいるようだ。4月16日から19日にかけてアデレードで開催された現地商談会「AUSTRALIAN TOURISM EXCHANGE 2018」(ATE)で取材した各州・地域の観光局などの説明をもとに、日豪間の観光交流の現状をまとめた。

着実に増すオーストラリアの存在感

 オーストラリア政府観光局(TA)と日本旅行業協会(JATA)は16年に訪豪日本人旅行者の拡大に向けた覚書(MOU)を締結し、「2020年までに70万人」という目標を掲げた。前年の15年は約34万人だった日本人旅行者を、その約2倍に拡大しようという意欲的な目標だ。16年は目標ペースを上回る22.7%増の41万3800人を達成したが、70万人を達成するには、その後も20年まで14%程度の伸びを続けなくてはならない計算だ。

(左から)JATAの田川氏、TA会長のサウス氏
※2016年9月21日撮影

 実際には17年が4.0%増の43万4600人に止まったことで、20年70万人の実現は難しくなりつつあるが、目標へ向けた足場固めは日豪両国で着実に進んでいると考えられる。また、日本人旅行者は4年連続で増加しており、日本の旅行市場、旅行業界におけるオーストラリアの存在感はこの4年間で着実に上昇している。

 現況の特徴として、大手旅行会社が相次いでオーストラリアを戦略方面として強化していることが挙げられる。日本旅行は17年から20年までの中期経営計画で、5ヶ国の「No.1戦略国」の一つにオーストラリアを挙げ20年には17年の2倍の目標を掲げて販売拡大の取り組みを開始。今年4月にはシドニーに堀坂明弘社長を初めとする同社幹部やグループ各社幹部、提携販売店関係者など80名を集めて決起大会も開催した。

 JTBも今年2月にTAと協力覚書を締結し、共同マーケティングの取り組みを開始し、18年度のグローバル・デスティネーション・キャンペーンの対象としてオーストラリアを選んで送客2割増をめざしている。


改めて旅行会社重視を鮮明にするTA

会場の様子

 こうした日本の旅行業界におけるオーストラリア重視方針に対し、TAも日本市場および日本の旅行業界を重視する方針を打ち出している。ATE会場でメディアのインタビューに応じたTA本局インターナショナル・エグゼクティブ・ジェネラルマネージャーのフィリッパ・ハリソン氏は、「観光収入を重視するオーストラリアにとって、ハイイールドな日本人旅行者は特に重要だ。日本人旅行者のオーストラリアにおける支出は年間約180億豪ドルだが、2020年にはこれを270億豪ドルから330億豪ドルまで拡大したい」と述べ、日本市場の可能性に大きな期待をかけている。

 また「旅行業界ではOTAの存在感が増しているが、TAの調査ではオーストラリアを旅行する日本人旅行者の80%は旅行会社経由で旅行を手配している。この実態からみてもTAとして旅行会社を最重視する方針に変わりはない」としている。