全日空、国際線を成長の柱に−新事業戦略、国際線収入7割増へ

  • 2010年3月23日
 全日空(NH)は今後国際線をグループ事業の中核と位置づけ、2011年度の国際線旅客事業の収入を2009年度見込みの2120億円から68.4%増となる3570億円に拡大する計画だ。3月19日に発表した「2010−11年度経営戦略」に盛り込んだ。NHは、首都圏空港の発着枠拡大とボーイングB787型機の導入を迎える2010年度を最大のビジネスチャンスとしており、2010年度は2009年度見込み比で28.8%増の2730億円をめざす。

 座席供給量や輸送量の計画値は明らかにされていないが、発表資料によると2007年度を100%とした場合、座席供給量は2009年度見込みが90%台前半のところを2010年度に約105%、2011年度に約130%弱まで拡大する計画とみられる。輸送量の動きもほぼ同様だ。

 この達成に向けては、「羽田増枠」と「成田・羽田空港のデュアルハブ化」を基本としてネットワーク型ビジネスを拡充。アジア路線をさらに拡充するとともに、ユナイテッド航空(UA)とコンチネンタル航空(CO)と共同で申請中の独禁法適用除外(ATI)の認可を経た後に中国・アジア/北米線の需要獲得をはかる。また、アライアンスの活用では、2010年7月に成田/ミュンヘン線も予定。国内線のネットワークも、国内から海外への接続需要の拡大をはかるとともに、単体で需要が見込める路線は増枠を活用して路線展開をねらう。

 また、マーケティング体制を強化し、グローバルマーケットに対応した新たな運賃・制度への移行をめざすとともに、海外でのウェブ販売の拡大もすすめる。これまでの国際線、国内線の概念にこだわらず、業務や人材、システムなどの一元化をはかる。

 一方、生産性の向上とコスト削減のため、国内線コミッションの見直しや早期退職などもすすめる。人件費関連では、2010年度中に営業など間接業務の人員数の約20%にあたる約1000名を早期退職などにより削減。グループ本社・本部体制への移行を2010年4月から開始し、2011年度に完了する。

 さらに、2010年7月にはアジア・リゾート路線を運航するエアージャパンと国際貨物専門のANA&JPエクスプレスを統合し、同10月にはエアーネクストとエアーニッポンネットワーク、エアーセントラルの3社を統合。その後、2011年度中にグループの航空会社を3社に再編する計画だ。コスト削減効果は、国内線コミッションを含む販売費で190億円、人件費で200億円、事業・コスト構造の見直しで470億円だ。


▽2009年度業績は下方修正、10年度での黒字化めざす

 NHは3月19日、2010年3月期(2009年4月1日〜2010年3月31日)の業績予想を下方修正した。国際線、国内線ともに想定どおりに単価が回復しなかったという。売上高は1兆2200億円(前回発表、以下同:1兆2600億円)と引き下げ、営業損失は610億円(200億円)、経常損失は950億円(450億円)、純損失は650億円(280億円)とした。

 一方、2010年度については、「2011−11年度経営戦略」で営業収益が1兆3600億円、営業利益が420億円、経常利益が130億円、純利益が50億円の目標をかかげる。同戦略を実行することで、2011年度には営業収益を1兆4770億円、営業利益を1040億円、経常利益を610億円、純利益を370億円にまで拡大したい考えだ。


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