「”エコだから” ではなく楽しいから使ってほしい」完全自然由来成分の米ストロー、地産地消の取り組みもーUpay 上官ゆい氏

  • 2024年4月11日
-米ストローの商品の特徴について教えてください。

上官 完全植物由来の製品で、1時間使用しても溶け出したり味に変化を与えない無味無臭のストローです。可愛い色合いも楽しめ、ストロー本体に印字することも可能です。着色料については天然着色料や製菓用の食用着色料など、日本食品検査による着色料溶出検査をクリアしているものを利用しています。

 米、コーンスターチ、水のみという材料で製造するシンプルさから、30日で自然環境に戻ります。また、農家の抱える在庫の10%以上は古米で、くず米の再利用も難しい中、米ストローは活用されていないくず米を原料の一部とすることで地産地消及び米農家の支援にもつながっています。

 その点で言うと、JAとの取り組みも拡大中です。その土地ごとの日本酒用に削られた米や米粉を活用できますし、既に導入いただいているホテルや観光施設の方々も地産地消の考えにご賛同いただいているところが多いです。また、農福連携に近いことをやっていきたいという想いから、障がい者施設の方に検品や梱包を担っていただいています。

-現在の課題は何でしょうか。

上官 やはりコスト面でしょうか。おおよその単価で比較すると、プラスチック製ストローが0.8円、紙ストローが2円、米ストローはそれ以上となります。また、くず米は九州以外からお送りいただき加工製造する場合、配送費をご負担いただくことになりますが、昨年度は前年度の倍以上のご注文がありました。

 業務用であれば最低ロット1ケース(5000本)から受注しており、1~2週間で納品可能です。今のところは外資系ホテルや、”30日で完全に生分解される”という点に意義を見出してくれる水族館、植物園などに導入いただいています。例えば、リッツカールトン福岡や長崎マリオットホテル、福岡市の水族館、和歌山のアドベンチャーワールドなどですね。

 堆肥化できるという強みもありますが、焼却炉が高性能であるが故に生ゴミにも油を注いで燃やしているような日本では、海外に比べて堆肥化という特徴が響きにくいのが実情です。とは言え、今やエコバックは浸透しましたし、ストローを有料としている飲食店も出てきているので、意識が変わってきていることを実感しています。

 導入ハードルの高さに苦戦はしているものの、ノベルティやOEMの受注が下支えしています。SDGsの取り組みに意欲的な大手ゼネコンや、環境配慮の啓発イベントの運営事務局などに米ストローを通じてサステナブルなお取り組みのPRにお役立ていただいております。

-今後の展開はどのようにお考えですか。

上官 ストローは年間の売上1億本を目指しています。現在、海外企業からの引き合いも増えてきており、国外販売にも積極的に動いていきます。その他、くず米製のカトラリー類や竹歯ブラシも開発中です。CO2排出量も低いので、実用化ができれば、飲食店はもちろん航空会社などにも興味を持ってもらえると嬉しいです。その他、ストローを使用後畑に戻していくような取り組みも構想中です。

 最近は福岡県の男女参画委員会への参加や、大学の授業へ登壇する機会も増えています。弊社のパーパスは「人々の生活をより豊かに」。これは起業当時から変わらない想いです。持続可能な暮らしに向けて事業に取り組んでおりますので、常に謙虚に学習し、責任を持ってお客様にお届けする、そしていただいた信用に感謝の念を持ちながら技術を進化させていきたいと考えています。

 ヴィンテージショップの創業からスタートし、紆余曲折ありながら8期目になりましたが、改めて振り返ってみると、事業を推進するのは娘のためでもあります。彼女のためにもチャレンジしたいのであればチャレンジできる世の中にしていきたいという想いが根底にあります。

-最後に読者に向けてメッセージをお願いします。

 ホテルでの体験は日常のその先にある特別なものだと感じています。プラスチックストローは非常に便利なものですが、残念ながらリサイクルできないプラスチックごみなのです。お客様に新しい体験を提供できるアイテムの一つが米ストローであると大変嬉しく思います。未来の子どもたちに美しい海を遺せるよう、商品開発に邁進してまいります。