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ベストツーリズムビレッジに選ばれた美山町に行ってみた-RT Collection 柴田真人氏寄稿

  • 2022年3月23日

地域の課題解決に向けて旅行会社ができること

 美山町は景観作物の蕎麦やお茶が有名です。かやぶきの里の前にはそば畑が広がり、里山にはお茶っ葉になる野草が豊富にあります。毎年9月中旬頃がそばの花の見ごろで、茅葺きの屋根の集落を背景に白い花が一面に咲いている風景は非常にきれいです。

 エコツーリズム大会では、そのそば畑で収穫できるそばの実から作ったそば粉を使って蕎麦打ちを体験して、実際に自分が打った蕎麦を食べたり、美山町の里山で採れた柿の葉やヨモギ、クマササ、オオバコ、ドクダミ、スギナを天日干しにしたものを集落のおばあちゃんと一緒に焙煎し、お茶っ葉を作って飲んだりします。景観保全のお話を伺った上でこのような体験をする一連の流れは、地域の自然や環境を学びながら住民の方とも交流ができ、観光コンテンツも体験ができるため、参加者の満足度は非常に高いと思います。

蕎麦打ち体験

お茶作り体験

 そんなエコツーリズムに注力している美山町には年間70万人以上の観光客が足を運びます。一見うまくいっているように見えますが、2010年には約4,700人いた町内の人口も現在は約3,600人となり、高齢化が進むと共に人口減少が進んでいます。また、経済面で見てみるとコロナ前の2019年の観光消費額の平均は1人当たり936円、2020年には1人当たり745円に落ち込んでいるという課題もあります(京都市内の観光客の観光消費額の平均は約2万円)。これは、景観を見に来るだけの日帰り観光客が多く宿泊客が少ないということや、美山町は京都から福井に抜けるツーリングのルート上にあるため、かやぶきの里を見て道の駅で休憩する利用者が多いことなども影響しています。

 このような課題を解決していくためには、多様な関係者や事業者と共感と協同をしながら、地域の稼ぐ力を引き出していくことや観光素材を観光資源に変えていく取り組みや戦略が必要になってきます。また、外部の専門家や経営者を巻き込んでいくことも必要になってきます。旅行事業者としては、視察の際にホテルの視察やツアーを体験するだけではなく、体験に加えて地域住民の方と交流をしていくことで、地域の文化的背景を深く知ることができ、さらに地域の観光を自分ごとのように考えていくことができると思います。

 今回のエコツーリズム大会の参加は非常に気付きが多いものとなりました。このように考えられるようになったことで昨年から何度か足を運んでいる私自身は関係人口の1人になったのではと感じています。皆さんも美山町に足を運んで地域の方々と交流をしてみましょう。

柴田 真人 / Masato SHIBATA
大学生時代にオーストラリアのタスマニア島で過ごし、旅行会社に就職。15年間の旅行会社勤務時代には主に東南アジア方面の仕入れや企画に従事。また、フィリピンでの5年7ヵ月間の海外赴任を通して、アウトソーシング事業の立ち上げからインバウンド事業における現地支店の立ち上げ及び日本マーケット初のチャーター便運航のプロジェクトなどを経験。その後、2018年に合同会社 RT Collectionを設立。