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海外OTA・ホテル業界の将来は?ビジネストラベルの変化とは?-WiT JAPAN 2022

Corporate Travel: What Has Changed Forever?

(左上から横に)ベンチャーリパブリック・トラベルjpの柴田氏、モデレーターのフーン氏、Spotnanaのソーレセン氏、FCMトラベル・アジアのサイエ氏
【パネリスト】
ベンチャーリパブリック・トラベルjp代表 柴田啓氏(WiT JAPAN & North Asia共同創設者)
Spotnana ヴァイスプレジデント・ストラテジー&パートナーシップ ジョニー・ソーレセン氏
FCMトラベル・アジア マネージング・ディレクター ベルトラン・サイエ氏
【モデレーター】
WiT創設者 イェオ・シュウ・フーン氏

 ビジネストラベルの変化をテーマにした「Corporate Travel: What Has Changed Forever?」には、ベンチャーリパブリック(トラベルjp)、業務渡航系スタートアップとして知られるトラベルマネジメントカンパニー(TMC)のSpotnana、世界最大級のTMCのFCMからFCMトラベル・アジアが参加した。

 セッションではモデレーターのイェオ・シュウ・フーン氏が、ビジネストラベルに大きな影響を与える3つのテーマとして「注意義務(duty of care)」「持続可能性」「テクノロジー」を挙げた。これに対し、FCMトラベル・アジアのベルトラン・サイエ氏はコロナを契機に企業がより渡航者の健康に注目するようになり、企業の注意義務がさらに強まったことを指摘。「西洋ではもともとあったがアジアではあまりなかったこと。コロナ禍で協力関係が生まれている」と話した。

 Spotnanaのジョニー・ソーレセン氏は「テクノロジー」について、ビジネストラベルの3割から4割はまだオフラインでの予約であることを指摘。今後はクラウドを活用したテクノロジーの進化で「オンライン化へのコストが劇的に下がる」ことから、オンライン化が促進するとの見通しを示した。

 ベンチャーリパブリック・トラベルjp代表の柴田啓氏は「時間と経費が節約できるセルフブッキングが大きなトレンド」と現状を説明。こうしたなか、同社が提供するチャットで簡単に出張予約できるサービスは好調に推移しているという。

 柴田氏はチャット利用者から、「以前はメールや電話などで行っていた手続きを、レスポンスの早いチャットに変えたことで満足している」というフィードバックがあったことを紹介。「過去6ヶ月で100以上の企業がサインアップしたが離れていない」と語り、テクノロジーの重要性を語った。

 セッションでは、他企業と協力したプラットフォームの構築についても意見交換がなされた。サイエ氏はFCMの今後の取り組みとして「オープンなプラットフォームを構築したい」とコメント。「全て自社でできるとは思ってはいない。オープンなプラットフォームを創り、APIを介してコンテンツやサービスを組み込むことで、顧客が使いたいサービスを多く提供できる」と話し、「コンテンツやサービスのリニューアルをおこない、柔軟に対応できるようにしていきたい」と話した。

 FCMはソニーグループでビジネストラベルを担ってきたNSFエンゲージメントと合弁会社「FCMトラベル スタンード フォア ジャパン」を設立し、1月5日から事業を開始したところ。これに対し、サイエ氏は「素晴らしい出会いにより、事業を展開しているところ」と説明。「我々は日本市場に期待している。我々の未来はいかにテックを制覇するかで決まる。日本市場は活発になってきており、市場についてもっと理解する必要がある」との考えを述べた。

 一方、ソーレセン氏も「グローバル市場は単一管理するのは難しい。需要に対処するためには、顧客が使いたいものを何でも持ってきて予約データに接続できるようにすること」と話し、「インテリジェンス・マネジメントが今後重要になるだろう」と語った。

 このほか、セッションではビジネス渡航のコスト削減についても議論がなされた。サイエ氏は、コロナ禍では旅行の際、幾度もPCR検査が必要となることなどを例に挙げ、「安全性への配慮により、コストはそれほど重要視されてこなかった」と振り返った。一方、同氏はコロナにより従来は厳しい要件を設定している航空会社が柔軟に対応してくれたことに触れ、「航空会社がハイレベルな柔軟性で対応してくれたことは、この時期の旅行者にとってはポジティブな側面だった」と感謝の意を示した。

 柴田氏は日本のビジネストラベルの現状について、出張者がダイナミックパッケージを使ってコスト削減をはかる傾向にあることを指摘。「ダイナミックパッケージでは航空会社や鉄道会社が競争力のある値段をつけており、それを利用すればコストセーブが可能」とした。

 ソーレセン氏はコストの削減という観点から、技術革新のためにテック人材の確保が重要であることを指摘。「テックの人材を採用するのは難しいが、そういう人を採用してクラウドベースのスケーラブルな業務渡航ソリューションを作らなければならない。人材をキープできる会社が成功する会社」と語った。