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旅の力で青少年の成長を支援する施設にー京都市宇多野ユースホステル 佐藤隆芳氏

教育旅行向けにさまざまな体験を提供
コロナ禍で家族利用も増加

-海外からの団体についてはどのように集客していますか。

佐藤 海外の旅行会社からの直接予約、日本の現地法人からの予約などいろいろなケースがあります。世界のユースホステルを統括する国際ユースホステル連盟はイギリスに本部があり、世界的なネットワークのなかで情報交換や情報発信を行い、集客につなげています。

-団体の集客に力を入れているということですが、個人客はどのように集客していますか。

佐藤 一般的なPR活動は行っていますが、やはり口コミによる集客は根強いです。もちろんOTAからの予約も増えています。ただ、OTAの難しいところは、掲載写真や価格のみで判断されてしまうことです。我々としては、ユースホステルの活動に共感し、また施設の特性や特徴に合う人に来てもらいたいと思っています。

-その特徴とは。

佐藤 ユースホステルは宿泊施設ですが、それはあくまでも機能だと思っています。ユースホステルは100年以上前に急速な工業化が進むドイツで、子ども達のメンタルヘルスへの影響に危惧したドイツ人教師が、学校ではなく自然や旅の中で学ぶ「移動教室」を授業として取り入れました。その道中に子ども達が安心安全に泊まれる宿を整備したことが始まりです。我々としては、旅の中の出会いや交流の機会、場がその人の学びとなり、成長につながるということを大切にしています。そこは外したくありません。

 その出会いや交流のきっかけとして、体験プログラムやイベントも重視してきました。現在はコロナ禍で休止していますが、以前は毎日午後8時から「エブリディ・ワン」というイベントを企画していました。例えば、生八ツ橋作りや演奏会、トークイベントなどです。ここには地域の方にもボランティアで関わってもらい、そのなかで宿泊者と地域の方との交流も生まれていました。

 京都ユースホステル協会としても様々な団体と連携しながら京都で旅のプログラムの提供を行っています。京都を愛してやまない地元ガイドによる「まいまい京都」という町歩きイベントもその1つです。庭師の方をガイドに自身の手掛ける日本庭園を鑑賞したり、豊臣秀吉が築造した「御土居」跡を巡る旅、商店街で食べ歩きをする企画など年間700コースほど開催しています。「魅力的なガイドさんにまた会いたい」とリピーターも多いです。

-コロナ禍で体験プログラムの実施が難しいなか、新たに始められたことはありますか。

佐藤 中庭のオープンエアでできる焚火体験プログラム「焚火庵(たきびあん)」というイベントを始めました。また、野外活動初心者の家族向けに専門家による野外クッキングのレクチャーと実践を行い、気軽にアウトドアを楽しむプログラムも試行しています。

 コロナ対策については、一般的な感染対策に加えて、現在繁忙期以外は相部屋にはしていません。自炊用キッチンなど共有スペースでは密にならないように注意しています。

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