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ワクチン先行接種ツアーを社員旅行で敢行、「常に一歩先を見据えた動きを」―ROOT2取締役 阪倉豪氏

米国ワクチン接種の最前線

 閉塞感漂う観光産業において、多くの経営者が日々難しい決断を迫られている。日本でのワクチン接種は拡大の希望は感じられるもののまだ序盤であり、今後数ヶ月は活発な往来はしづらいというジレンマのなか、今アクションを起こすのはどのような人なのか。社員旅行として独自のワクチン先行接種ツアーを敢行したROOT2(ルートツー)取締役の阪倉豪氏に話を聞いた。

ROOT2取締役の阪倉豪氏。インタビューはオンラインで実施した。
-まずは貴社の事業について教えてください。

阪倉豪氏(以下敬称略) 京都をベースに、約30軒のゲストハウスの運営代行や自社保有ホテルの運営をしています。また飲食店事業もこの半年くらいの新たな取り組みとしてスタートしました。

 元は「大創」という社名でしたが、ブランドネーム「ROOT2」が認知されていることもあり、最近社名を「株式会社ROOT2」に変更したところです。「スピーディな決断と行動」という理念を掲げて経営を行っています。運営している”THE ROOT2 HOTEL” についても「まさか京都にこんなホテル絶対ないだろう」というようなデザインや家具を揃えたり、飲食店も奇抜なデザインやコンセプトを取り入れ、差別化を意識した経営をしています。

-コロナ禍中に飲食事業をスタートされたと伺いました。

阪倉 はい、以前からホテルに付随する形でのコーヒーショップやダイニングは展開していましたが、あくまで宿泊業がメインでした。ところが昨年、ちょうど自社保有のゲストハウスを2軒準備し終えたところでコロナが始まってしまい、急遽飲食店に切り替えたという経緯です。自分たちの強みやノウハウを活かした場合、飲食店としての方がうまく切り盛りできるとの判断でした。

-社員旅行としてのワクチン先行接種ツアー実施に至った経緯を教えてください。

阪倉 5月に新規で飲食店舗を開店する予定でしたが、緊急事態宣言の延長に伴い2度延期せざるを得ませんでした。また私自身THE ROOT2 HOTELの支配人という立場でもあるので、「コロナ禍だからこそできること」や「コロナ禍ならではのライフスタイルに合うものとは?」ということを常に考えていましたが、ふと、いつ終わるか分からない「今の状況」を乗り切るために目の前の仕事をこなすだけでは面白くない、一歩先に向けた動きをしたいと強く思いました。

 では何ができるのかと考えた際、「いっそのこと休業してでも渡米してワクチン接種しておけば、オープンできた際に来店されるお客様はもちろん、働く従業員も安心できるのではないか」と思い至り、今回の社員旅行を兼ねた米国ワクチン接種ツアーを企画しました。

 強制ではなく任意で参加者を募ったところ、6名の責任者が参加することとなりました。会社としては小さくない支出ですが、そこを踏まえてもビジネス面で取り返せる、やる価値があると信じて敢行しました。

 もちろん皆さん色々な考えをお持ちでしょうし、批判的に捉える方もいるかとは思いますが、自分たちなりにビジネス面および社員やお客様の安心面を考慮して、最善と思える選択肢を選び、スピーディに行動に移したつもりです。

-実際にワクチンを接種されていかがでしょうか。

阪倉 本日で渡米4日目になりますが、到着2日目には渡航した6名全員が接種を完了しました。まだ皆若いということもあり、翌日に若干筋肉痛やだるさなどの副反応も出ましたが1日で収まり、大きなトラブルはありませんでした。

 先にお話しした通りメインの目的は「お客様と働くスタッフの安心」ですが、あくまで1つの選択肢として希望する個人にとって参考になればという思いで、インスタグラム(@root2_inc)等でワクチン接種プロセスの様子を動画で発信しています。敢えて事前の詳細なリサーチは行っていないので、「飛び込みで土曜日に行ってみたらここの会場は休みだった」「教会や大学の駐車場でドライブスルー接種を行っていたので体験した」というようなリアルな動きが伝わるかと思います。

-観光産業で働く皆さんへメッセージをお願いいたします。

阪倉 私たちは元々ゲストハウスの運営代行等のインバウンド領域しか手掛けていませんでしたが、「何があるか分からないから日本人向けの宿泊施設を作ろう」ということでTHE ROOT2 HOTELを始めました。実はそれはコロナ前のことでした。

 自分の考え方が正しいかは分かりませんが、先を見据え、常に他の人がしていない、差別化を図れることをしようと意識しています。私は飲食を含めた観光産業が厳しい状況にあるからこそ、この領域で何かできないかという考え方をする人間なので、同じ考えの人がたくさんいたら嬉しいです。おこがましいかもしれませんが、苦しいからと他の業種に転換することなく、同じフィールドに立ち続けながら一緒に観光産業を盛り上げていけたらと思っています。

-ありがとうございました。