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ディスラプターAirbnbの衝撃-シェアリングエコノミーを分析する

CtoCモデルのターゲットは全世界70億人
今後のエアビーの可能性を考察

 F-ness International(Singapore)代表取締役の赤井亮太です。シンガポールは、雨が降らず暑い日が続いています。3月から4月は日本企業の帰任・着任の時期ですので、私の周りにも帰国されるという方は多いです。今年の日本人学校の春休みは1カ月半程度あるそうです。なぜかというと、着任する先生が2週間隔離を経てからしか学校に来れないからだそうです。今後は着任・帰任がプラス2週間程度のバッファーを持っていくのかもしれませんね。

 さて、先日のオンライン・トラベル・エージェント(OTA)についての記事から1カ月程度経ちましたが、今回は業界地図を塗り替えつつあるAirbnb(以下、エアビー)について書きたいと思います。

©Airbnb

歴史

 エアビーの創業話をご存知でしょうか?まさにアメリカンドリームを地で行くようなストーリーです。共同創業者は3人で、ブライアン・チェスキー(Brian Chesky)とジョー・ゲビア(Joe Gebbia)の2人はデザイン系大学のロードアイランドスクールオブデザインの卒業生で、卒業後は就職しサンフランシスコに住んでいました。しかし失業により家賃の支払いにも困窮するような状態になります。

ブライアン・チェスキー氏 ©Airbnb

 そこで、彼らは家賃捻出のために自室を貸し出しました。これがエアビーの始まりとされています。2007年10月のことですが、地元のデザイン博でホテルが満室になる時を見計らって、リビングなどの余ったスペースにエアマットを敷いて貸し出すことにしました。ウェブサイトで募集すると瞬く間に3名が集まり、これは行けると踏んでビジネス化したそうです。

 その後、ネイサン・ブレチャージク(Nathan Blecharczyk)が加わり、2008年に正式に「Airbnb」が立ち上がります。ちなみに、エアビーは「Air Bed and Breakfast」の略で、彼らがその3人のゲストにエアマットを提供し、朝食を出した、その初期のサービスそのものです。

 ここからすぐに順風満帆とはいかず、特に投資家たちは「見ず知らずの人」を自宅に泊めるというアイデアに興味を示しませんでした。一方で、サーバーの拡張やウェブサイト構築で資金が必要だったため、カードローンで300~400万円を借金するような状態だったそうです。

 昨年は新型コロナウイルスの影響で社員の4分の1程度をレイオフする悲惨な状況を経験しながらも、創業から15年程度で時価総額10兆円の企業になったのはすごいことです!

 ちなみに、日本で時価総額が10兆円を超える企業は上位5社しかありません。株式会社数は115万社程度ですので、0.0004%の確率です。エアビーはすでにソニー(時価総額13兆円)、キーエンス(12兆円)、NTT(11兆円)と肩を並べていることになります。その上となると日本ではソフトバンク(21兆円)とトヨタ自動車(27兆円)しかありません。。。衝撃じゃないですか!?まさにアメリカンドリームです。

シェアリングエコノミー

 エアビーが属する市場は、古くて新しい概念「シェアリング」と言われます。なぜ古くて新しいかと言うと、古くはご近所さんでおすそ分けがあったからです。余ったものを分ける、これもシェアリングです。また、レンタルショップのTSUTAYAやゲオ、レンタカーもシェアリングの一種と言えます。今までもあった概念ですが、エアビーがおこなっているシェアリングは従来型と異なりますので、これは後述します。

 まず、このシェアリングエコノミーの市場規模ですが、平成28年版総務省情報白書によると、2013年に世界で約150億USドル(約1.5兆円)規模だったものが、2025年には3350億USドル(約34兆円)程度まで拡大すると予測されています。12年で市場規模が20倍以上拡大するという予測です。

シェアリングエコノミーの市場規模(世界)

 その多くが、Uber(アメリカ)、DiDi(中国)、Grab(東南アジア)等の配車サービスのシェアリングエコノミーだと推測されますが、全世界的に加速度的に伸びています。日本のメルカリもシェアリングエコノミーの例とされています。

 先ほど、古くて新しい概念と説明しましたが、具体的にエアビーの提供するシェアと、ご近所さんのおすそ分け、そしてTSUTAYA等のシェアはどのように違うのか定義してみたいと思います。

 そこには2つの軸が存在し、1つは提供範囲がOpen(柔軟に外に広がるか)かClosed(例えば、地域限定や血縁者限定など、限定的か)か、もう1つが一方向(サービス提供者と利用者が不変)か双方向(サービス提供者と利用者が可変)かです。例えば、ご近所さんのおすそ分けをイメージしてみてください。これは金銭を伴わないシェアですが、「ご近所」というClosed(限定的なスペース)で双方向(おすそ分けされたら、お返ししますよね?)のシェアと言えます。

 一方で、TSUTAYAやレンタカーの場合には、CD・DVDや車を所有するのは、運営者であるTSUTAYAやレンタカー会社です。利用者は、不特定多数に広がっていきますので、提供範囲はOpenと言えます。方向はどうでしょうか。一般の自家用車が、その市場に出て行かないという点で一方向のサービス(サービス提供者と利用者は不変)になっています。つまり、Openで一方向のシェアを提供していると言えます。

シェアリングエコノミーの概要

 ところが、エアビーの提供するシェアは、グローバルにOpenで、エアビーを利用した人が、明日サービス提供者になれる双方向のシェアです。ここが新しい概念と言えます。メルカリや、配車サービスも同様です。これを可能にしたのはインターネットやモバイル技術の進歩であり、世界のボーダレス化です。これらの流れとも相まって、エアビーやUber、メルカリ等は飛躍的な成長を遂げています。こう考えると、YouTubeも従来型のテレビと比べると、Openで双方向なシェアですね。

 エアビーは、世界中にある「遊休資産」を使用しますので投資がほぼかからず、無限に増えていきます。双方向ですので、友達が友達を呼ぶように、SNSが爆発的に広がるのと同じように、加速度的に増えていきます。ここにOTAとの違いがあり、優位性があると言えます。

 OTAはOpenではあるものの、双方向ではありません。サービス提供者はホテルや航空会社であり固定化されています。また、ホテルや航空会社は多額の初期投資が伴うため、無限に増えていくわけではありません。

OTAモデル vs エアビーモデル(クリックで拡大)

 さらに、エアビーを利用した方なら理解して頂けると思いますが、ホテルがない場所でも宿泊ができますし、大勢での旅行でも使える施設もあるし、お城などに宿泊できるユニークな施設もあるし、ホテルでは提供できない価値さえ生み出してくれます。ここもユーザーを引きつけて止まない理由だと思います。

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