シンガポールの今-ウィズコロナからポストコロナに向けて観光業の現状

ホテル

 さて、ホテルはどうでしょうか?シンガポールのホテルで単体で上場している企業がありませんので、財務情報は取れませんが、稼働率やADRなどで状況を見てみたいと思います。

 まず稼働率です。下記の通り、Phase2になった2020年6月あたりから徐々に稼働を戻し、7月には概ね70%、そして2021年2月も50~60%で推移していることがわかります。国内旅行がないシンガポールにも関わらず、ここまでホテルが部屋をうめられるというのは驚きではないでしょうか?ステイケーションの需要喚起が功を奏していると言えます。

シンガポールのホテル稼働率

 しかし、単価は、どのホテルカテゴリでも厳しく、コロナ前の60~70%程度しか取れていないことがわかります。

シンガポールのホテルADR

 基本的には外国人旅行者の宿泊を期待してホテルは作られていますので、なかなか国内需要だけではうめられないというのが現状です。国内需要だけでは、稼働は50~60%、そして単価も60~70%が限界ということでしょうか。

旅行会社

シンガポール ヨットレンタル(例)  ここも財務情報がありませんので、私見と定性的な情報を元に紹介します。

 まず、まだまだ大半の旅行会社がカウンターを閉めたままです。国際旅行を販売していましたので需要はほとんどなく、あったとしても国内のレジャー施設やステイケーションになるため店舗での説明が必要になるケースはほとんどありません。店舗を開けるよりも社員を休ませてコストをカットした方がよいという判断だと思われます。最大手のChan Brothersでもほとんど全ての店舗が閉まっています。

 ただ、このような状況でも旅行会社は、あの手この手で販売をしています。たくましいです!まず、クルーズの販売(2泊3日や3泊4日)や、ヨットの販売(ほとんどが日帰り)です。あるヨットのレンタルをしている会社は前年に比べ20%予約が伸びたそうです。そして現地ツアー等です。

現地ツアー(例)  この旅行会社の取り組み自体は、日本とあまり変わらないと思います。海外旅行をできないため、国内に目を向けている状態です。



その他

 旅行業界は厳しい限りですが、良い産業もあるようで、例えば、自転車の販売のシマノ(部品)は過去最高益のようです。そのほか、家飲み需要の増加によるフードデリバリー、レストランやバーもなかなか予約が取れない状況で、酒の卸売りも好調だそうです。年に数回旅行をするシンガポール人にとって、その出費がなくなりましたので、それを違う分野に使っているということだと思います。やはり、いつの時代も人間には楽しみが必要だということでしょう。

 世界中の誰もがワクチンの普及に期待していると思います。自由に行き来できる日が来ることを待ち望んでいると思います。だんだんとトンネルの出口が見えてきた状態です。本格的に需要が回復するまで、もうしばらく耐えましょう。

赤井亮太
F-ness International(Singapore)代表取締役社長
2007年東京大学大学院卒業後、アクセンチュア経営コンサルティンググループ、mixi、Expedia等を経て、2018年エフネスに参画。2019年より、F-ness International(Singapore)代表取締役社長に就任。シンガポールから海外の販売先パートナー開拓などをおこなっている。