【コラム】海外主力の中小旅行会社の皆さんへ

コロナ収束、需要回復への道筋がようやく見えてきたからこそ…

 感染者数の減少やワクチン投与開始、国内ではそれらに伴う緊急事態宣言解除の動き、海外では海外旅行解禁に向けたロードマップ公開等、ようやく海外渡航にも一筋の光明が見えて来ました。このまま一直線に収束し、需要回復とはならないでしょうが、今後も緊張と緩和を繰り返しながら、その波は日を追う毎に小さくなり、やがて収束を迎えるであろうと言う実感、具体的なイメージを持てる所まで来たと思います。

 私を含め海外旅行に関わる多くの人は、コロナ発生当初はその影響をあまりにも過少に評価し、数か月後にはその想定がいかに甘かったかを痛感、昨秋から年明けに至るまではなすすべなく悲嘆にくれ、時としては思考停止に陥った事もあったかと思います。

 ようやく先に光明が見え、まさに今からが勝負なのですが、Go Toトラベルの恩恵を受けていない海外主力の大半の会社は既に相当な傷を負い、人材を含め貴重なリソースが棄損された状態の会社も少なくないでしょう。また、感染状況の好転は雇調金をはじめとした各種の支援終了と同期します。各社の状況はまちまちでしょうが、財務的にはキャッシュフローの悪化、自己資本比率の低下とそれに伴う新たな資金調達の難しさ=需要回復後の運転資金不足を懸念される会社は少なく無いでしょう。

 また、現地でお客様の対応をお願いするガイドさんやコーディネーター、バスやリムジン会社はコロナ後までどれだけ存続しているのか、航空座席やホテル客室の供給量は十分なのか、価格や支払条件はどうなるのか、手配・仕入面での不安も拭えません。コロナ後の需要回復のスピードや規模が見えない中で、収支計画の立案にも苦慮するでしょう。

 前出の課題の内、自社でやるべき・やれることはそれぞれが死に物狂いで取組むしか有りません。しかし、共通の課題や個社では対応出来ない問題には協調して取組むべきです。事業運営に不可欠なベンダーさんも共に生き残れる施策や支援、旅行素材の提供側・購買側双方にとって最適な取引形態の模索、実態に即した旅行業法の改正等々、これらは共通の課題ですし、個社で解決できないものです。

 観光産業内には各種の団体が存在しますし、読者の皆さんの大半は何れかの団体に加盟されていると思います。しかしながら中小旅行会社がポストコロナに向けて解決すべき共通の課題への対応、中小企業が再生に向けて必要としている支援の内容等が共有され、実際アクションに充分に反映されているとは言い難いのでは無いでしょうか。

 出口は見えて来た、しかし手なりではそこに辿り着けない、それが現状でしょう。なりふり構っていられる状況では無く、今こそタブーは忘れ、波風を立てる事を良しとして、声を挙げ、行動を起す必要が有ると考えます。

岡田直樹
㈱エフネス代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人。27歳でエフネスの前身㈱ルゥエストを創業し、31周年にあたる今年に至る。旅行素材のホールセール、観光関連企業への決済サービス提供、緊急対応代行、業界誌トラベルビジョン運営等々、主に観光産業内のB2B事業に携わる。
㈱ティ・エス・ディ代表取締役、一般社団法人インバウンドデジタルマーケティング協議会理事