itt TOKYO2024

新会社でリアル店舗の可能性追求-日本旅行リテイリング

新サービスでデジタル世代も店頭に誘導
コロナ禍は店舗の価値を見直す機会に

-昨年は店舗での相談料徴収を試みた旅行会社もありましたが

経営幹部とミーティング中の大槻氏(左)(写真提供:日本旅行リテイリング) 大槻 良い取り組みだったと思うし、我々もいずれは挑戦してみたいという気持ちはある。弁護士や税理士のように相談料を収受することは難しいかもしれないが、プロ意識を持って相談に応じた対価をいただくのは正しい考え方だ。

 ただし店舗スタッフには新入社員がいればベテランもいて、さらにはクルーズエキスパートなどの資格の取得者と非取得者がいるので、実施する際にはある程度のランク付けをするなど、体制を整える必要があるだろう。また、お客様の数を追うのではなく、上質な旅をされる顧客をどれだけ獲得し、満足させられるかといった考え方が重要になってくる。

-COVID-19の拡大による影響はどの程度受けていますか

大槻 我々に限った話ではないが、極めて厳しい状況だ。3月の売上高は前年の10%にまで落ち込み、4月はゼロに近い。4月7日からは緊急事態宣言の対象となった7都道府県の店舗を休業し、対象が全国に拡大されてからは全店が休業に入っている。稼働しているのは「いい旅予約センター」の顧客対応に当たっている本社のスタッフだけで、支店スタッフはすべて一時帰休中だ。感染の拡大が収束しても、すぐに旅行需要が回復するとは思えないので、店舗の再開については多少遅れるかもしれない。

 需要の回復については、希望的に考えれば7月頃から動き始めると有難いが、3密対策など一定の行動基準のもと安心・安全を確保しながら、秋の連休あたりから徐々に、国内旅行から回復していくことを期待している。官民を挙げて実施する予定の「Go Toキャンペーン」(仮称)に合わせてアピールすることになるが、我々の店舗は消費者の目に触れやすいので、うまく需要回復に貢献できればと思う。

-コロナ禍後の日本人の海外旅行には、どのような変化が現れると思いますか

大槻 自粛続きの反動もあり、事態が収束しさえすれば旅行需要は回復していくのではないだろうか。旅行を再開できる状況を待ち望んでいるお客様は多いはずで、例えば今年前半のクルーズをキャンセルして、そのまま後半や来年のクルーズの予約をされる方もいる。旅行会社を利用するコアな旅行ファンを中心に、ニーズは大きいと見ている。

 インターネットの活用などによる非対面化は進むと思うが、その一方で今回のコロナ禍を通して、何が真実なのか分からない今の時代を実感した消費者は、より安心・安全に関して敏感になると思う。誰が発したかのか分からないネット上の口コミではなく、信頼できる人が発する情報を求める傾向は旅行業界にも波及して、リアル店舗の価値が見直されるきっかけになるかもしれない。

 また、個人的には「なるべく安く」といった低価格志向が少しは和らぎ、むしろ安心・安全が確保されるならば少々高くても受け入れるニーズが増え、単価は上がると予想している。そして旅行会社の店舗スタッフには販売に際して「我々が安心・安全を保証します」という姿勢が求められ、例えば「このレストランは定期的に換気し、トングも頻繁に交換するので衛生的です」といったプロならではの情報提供が必要になると思う。「旅行会社を利用した方が安心・安全な旅を楽しめる」ということを、より強力にアピールしていきたい。

-ありがとうございました