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新会社でリアル店舗の可能性追求-日本旅行リテイリング

新サービスでデジタル世代も店頭に誘導
コロナ禍は店舗の価値を見直す機会に

大槻氏(写真提供:日本旅行リテイリング)  日本旅行は4月1日、日本旅行サービスと日本旅行オーエムシートラベルを統合した店舗販売専門子会社として「日本旅行リテイリング」を設立した。OTAの勢力拡大が進むなか、リアルエージェントとして引き続き店舗での販売を強化するとともに、今年中には日本旅行の直営店舗を統合して、一体的な運営を推進する考え。トップには、日本旅行の取締役兼常務執行役員個人旅行営業統括本部長と日本旅行サービスの代表取締役社長を兼務していた大槻厚氏が就任した。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大により、不運にも嵐の中の船出となったが、同社は今後、店舗販売の可能性や意義をどのように追及していくのか。また、感染拡大の収束後の需要回復にどのように取り組むのか。大槻氏に詳しい話を聞いた。インタビューは4月27日に実施した。

-まずは新会社のスタートにあたって、意気込みをお聞かせください

大槻厚氏(以下敬称略) デジタル化やウェブ化が進む旅行業界にあって、店舗専門会社を作ることにはリスクもあり、時代の流れとはやや異なる取り組みとなる。それでも旅行会社の原点ともいえる、リアルな接客のための店舗は重要であり、無くなることはない。日本旅行グループではこれまで、3社の店舗がそれぞれの地域特性などに基づいて営業してきたが、まずはこれらを一体化して店舗営業の強みをしっかりと拡大する。

-これまでの日本旅行サービス(日旅サービス)と日本旅行オーエムシートラベル(日旅OMC)の棲み分けについて、改めて教えてください

大槻 日旅サービスは1968年に日本旅行の店舗部門の一部を移管して設立した会社で、イオンなどのショッピングセンター内での出店が中心だった。日旅OMCは、オーエムシーカードの旅行業部門として94年に発足した後、2004年には日本旅行とオーエムシーカードの合弁会社となり、主にダイエーの店舗内に出店していた。客層については似ている部分もあり、店舗の看板も徐々に日本旅行のブランドで統一してきた経緯がある。

 日本旅行リテイリングは日旅サービスの76店舗、日旅OMCの43店舗を引き継ぎ、ブランドを完全に統一して計119店舗でスタートした。今後は日本旅行がJRの駅などで展開している直営の約30店舗を統合して、同じ戦略に基づき運営していくことになる。

 ショッピングセンターの店舗と駅の店舗では売るべき商品も売り方も異なるが、それぞれの顧客のニーズをしっかりと取り込んだ上で、マーケットイン型のビジネスへと舵を切りたい。これまではサプライヤーのニーズやJRのデスティネーネーションキャンペーンなどに応えて、どちらかと言えばプロダクトアウト型の商品販売に注力してきたところがあるが、今後は顧客との接点の最前線として、そしてメーカーとしての意識も高めて商品造りに参画したい。

-今後の店舗網の再編についてはどのように考えていますか

大槻 これまでにも店舗網の最適化には取り組んできたが、採算性の悪い店舗や立地が良くない店舗、商圏が重複している店舗などについては引き続き見直し、2年間程度で100店舗くらいに絞り込む考えだ。例えばショッピングセンター内の店舗では、食料品売り場に隣接していて、落ち着いて旅行の相談をするのには向いていないと思われる店舗もあるので、検討が必要だと思う。