時間外労働はいかに削減すべきか-座談会レポート(前・実名編)

違反すれば刑事罰、訴訟・賃金倍返しも
弁護士と大手6社による「本音」の意見交換

JTB・ジャルパックが現況報告
各種の取り組みで残業は減少傾向

東武トップツアーズの山田氏  パネルディスカッションでは最初に、モデレーターを務めた東武トップツアーズ執行役員能力開発室長の山田徹氏が挨拶。「第1回で取り上げた若手社員の離職、第2回の女性の活用促進においても、主な阻害要因は時間外労働の多さだった」と振り返るとともに、「法定上限時間を超える労働をさせることは、懲役などもありうるれっきとした犯罪であることを再度認識しなくてはいけない」と強調した。意見交換に際しては「パネリストの皆さんには本音で議論していただき、参加者もヒントを持ち帰ってもらいたい」と呼びかけた。

JTBの山内氏  まずは最初に、全パネリストが各社の取り組みやその効果について紹介。JTBの人事部マネージャーを務める山内浩世氏は、冒頭で「さまざまな施策により社員の意識は以前よりも向上し、10年以上前に比べれば時間外労働は減っている」「全雇用形態における時間外労働時間の平均値は1ヶ月あたり18時間から20時間程度で、有給取得率は85%に上る。比較的良い状況だと思う」と現況を伝えた。

 時間外労働の削減に向けた具体的な施策としては、在宅勤務の推進やサテライトオフィスの設置、今春から業務効率化のためにマイクロソフトの「Office 365」を導入したなどを列挙。そのほか全国に推進委員を置き、グループの風土改革のための中長期的プロジェクト「ワークシフト2020」を実施していることも紹介した。「朝活」や「ゆう活」などによるシフト調整、「Office 365」に関する知見やデータのシェア、厚生労働省が推奨する勤務終了後から翌日の勤務開始までに10時間以上を休む「勤務間インターバル制度」の導入、1時間単位で年休や有給を取得できる「時間年休」の取得推進などに勤しんでいるという。

ジャルパックの鈴木氏  ジャルパック人事総務部長の鈴木健司氏は、最初に「時間外労働は減少傾向にあり、現在は“派手な目標”として19年度の平均労働時間を1850時間にまで減らすことを掲げている」とアピール。目標とする1850時間については「全社員がすべての有給を取得し、時間外労働時間を1ヶ月あたり10時間にとどめること」が実現できれば達成可能であることを説明した。

 具体的な施策としては「会議は17時半までに終える」「メールは(終業時刻である)18時半までに済ませる」「遅くとも20時までにはオフィスを出る」といった社内ルールの策定、在宅勤務やテレワークの導入、業務効率化に向けたIT環境の整備やオフィスの刷新、単純作業の外部委託などを積極的に進めていることを伝えた。IT環境の整備については、ほとんどの社員にノートパソコンとスマートフォンを貸与したといい、「コピーを取ったり、電話を取り次いだりすることが少なくなり、社員の集中力が向上した」と主張した。