itt TOKYO2024

富裕層のニーズが多様化、誘致に向けネットワークを活用-ツーリズムEXPO

価値ある体験を求める富裕層が増加
多様なニーズへの対応で地域全体が協力を

富裕層の多様なニーズにネットワークで対応

高野氏  パネルディスカッションでは、パネリストの3名が柏木氏の説明した富裕層の分類に基づき、訪日富裕層旅行の傾向を語った。国内外の富裕層旅行を扱う第3種旅行会社で、世界的なラグジュアリー・トラベルネットワーク「ヴァーチュオソ」の日本唯一のメンバーでもある、クリル・プリヴェ創業者&CEOの高野雅臣氏は、傾向は国ごとに違うことを説明。例えばアラブからの訪日富裕層はAll Luxuryが多いが、欧州からの訪日富裕層は、日本の文化を深く体験したいというニーズが高く、「京都の寺を貸し切りするなど、コストが掛かっても本物の体験ができるのならばやりたい」Selective Luxuryが多いという。

 続いて、グランドハイアット東京のチーフコンシェルジュで、フランス発祥のホテルコンシェルジュネットワーク組織「レ・クレドール」の日本チャプターであるレ・クレドールジャパンでバイスプレジデントを務める今泉愛子氏は、同ホテルはビジネス目的の宿泊者が多いため、「仕事がない1、2日に効率よく体験を楽しみたい」というニーズが高い事を紹介。「自分のためだけの体験、他の人がやったことのない体験を探している人が多い」という。

 同氏は例として、「鰹節職人に直接会って出汁のとり方を教えてほしいからアポイントをとってほしい」「源氏物語を研究している娘が、日本の著名な教授に会って話を聞きたいと言っている」といった要望があったことを紹介。「情報はできるだけ集めているが、お客様の興味が多岐に渡るため、準備している以上のものを求められる」と振り返った。源氏物語のケースは、大学の総務課に相談して教授を紹介してもらい、通訳の手配までしたという。

 せとうち観光推進機構の外部人材アドバイザーで、自治体・DMOのマーケティングや地域マネジメントのサポートなどを展開するIntheory代表取締役の村木智裕氏は、訪日富裕層にアピールする瀬戸内の観光素材として、沿岸部の古い町並みや、直島を中心とした現代アートを挙げ、「文化的な要素が多いため、知的好奇心の高い旅行者に馴染む。そういう方々は富裕層が多い」と話した。

客船「ガンツウ」
Photo by Tetsuya Ito (C)Setouchi Cruise,Inc
 同氏はせとうちクルーズによるClassic Luxury向けの小型ラグジュアリー船「guntu(ガンツウ。語尾のuには上に^がつく)」が、老舗の富裕層向け雑誌「Robb Report」に取り上げられたことを紹介。さらに、Robb Reportの記者からは「オーセンティックな日本の生活を体験できる古民家での滞在を記事にしたい」という要望があったといい、「これはModern Luxuryに属するコンテンツ。訪日富裕層のニーズが多様化してきている事がわかる」と話した。