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IRの経済効果や課題について専門家が説明-日本型IRセミナー

東京は2.2兆円、大阪は1.6兆円規模に
関連機関の連携がカギ

依存症対策には「予防と介入のアプローチ」を

ネバダ大学のアバーバネル氏  セッション3は「依存性について」をテーマに実施。まずはネバダ大学ラスベガス校准教授のブレット・アバーバネル氏が、ギャンブル管理ツールとして「損失限度の設定」「掛け金の限度設定」「時間制限の設定」を挙げ、その一方で「義務にすると逆効果の恐れがある。任意の限度設定の方が価値はある」と述べ、自主的な取り組みに効果があるとの考えを披露した。加えて、カジノ従業員のトレーニングも必要と主張。「問題のあるギャンブラーを特定する訓練を受け、依存を事前に察知することが大切」と述べた。

 依存者への支援策としては、ヘルプラインの設置によるサポート、ギャンブラー向けの教材作成、公衆衛生に関する情報提供などが有効と提言。さらに、「タバコと同じように、特に若者向けの広告への配慮も求められる」とアドバイスした。

メンフィス大学のウェラン氏  メンフィス大学教授で心理学者のジェイムズ・P・ウェラン氏は、ギャンブルクリニックを設立して約750人の依存症患者を診た経験から、「ほとんどの人が娯楽として楽しんでいる。その楽しみを完全に奪わないセーフティーネットをつくることが大切」と強調。制度を作る上では、ステークホルダーとなる政府、業界、消費者、病院、ギャンブル調査機関の連携が必要とした。

 その上で、対策として「予防と介入のアプローチ」を提言。予防では、学校や家庭での公共教育、従業員教育、タバコのパッケージに見られる警告表示などを挙げた。介入については、自分自身でギャンブルから離れる努力だけでなく家族や第三者機関によってギャンブルから遠ざけること、従業員による拒否を挙げた。

 ウェラン氏は今後の課題にも言及。これまでの経験から、依存症は進行性疾患で、何らかの出来事により急に進行することが分かっているが、「その兆候を見つけるのは非常に難しい」と話し、「依存症予備軍の行動リサーチをもっと進めていくべき」と主張した。このほか、一定の抑止力になるカジノへの入場料や、依存症患者を見極めるための顔認証については、慎重な議論が必要との考えを示した。



取材:山田友樹