トップインタビュー:日本アイラック代表取締役の国原秀則氏

事故発生時の旅行会社を24時間体制で支援
安心・安全に向けた取り組みの後押しも

「JATA重大事故支援システム」の提供を開始したのはいつ頃ですか

 弊社を設立した翌年の1997年で、当時はエジプトのルクソールで多数の日本人死傷者が出たテロ事件などがあり、旅行会社の責任が問われ始めた頃だった。JATAは社員数やノウハウの限られている中小の会員会社が、事故が発生した時にどう対処すべきかを模索していた。それ以前は保険会社で海外旅行の保険金の支払いを担当していた私も、保険会社による旅行会社への支援には限界を感じていて、それ以上のサービスが必要と感じていた。

 我々と近いサービスを提供している業者には、アクサ・アシスタンスやインターナショナルSOSなどの「アシスタンス会社」があるが、彼らは保険会社と連携して被災者が入院する病院の手配などをするのが主な業務だ。我々の業務はその上流の、アシスタンス会社と保険会社の連携ではカバーできない部分を担っている。


現在の加入会社数は

 5月10日の時点で、JATA正会員の3分の1にあたる397社が加入している。サービスには海外旅行用と国内旅行用があり、内訳は海外用のみを利用する会社が186社、両方を利用する会社が200社、国内用のみを利用する会社が11社。多くが中小の第1種旅行業者だ。加入条件はJATA会員の旅行業登録会社であることと、海外用については旅行事故対策費用保険に入っていること。近年は旅行会社の数も減少傾向にあるので、加入会社数についてはある程度飽和状態に達していると思う。

 国内用サービスは5年ほど前に開始したが、12年の関越自動車道でのバス事故の影響もあり、こちらも多くの会社が加入している。昨年には軽井沢でスキーバス事故があったので、国内旅行中心の旅行会社の加入も増加傾向にある。また、従来型の旅行会社に限らず、近年はOTAも加入している。対面販売ではない分、OTAの方が被害者やそのご家族に対応するノウハウに乏しい。


-料金設定についても教えてください

 海外用または国内用を単品で利用する場合は1年あたり税抜4万円、両方を利用する場合は6万円なので、中小企業にとっても大きな負担にはならないと思う。一部の中堅以上の会社はノウハウを得たのち脱会したが、それはそれで健全なあり方だろう。中小企業の多くは、ノウハウは得られてもマンパワーが足りないので利用を継続している。

 料金は基本料にさまざまな有料オプションを足して、といったものではなく、定額のパッケージで家族対応やマスコミ対応、法的責任範囲の分析、関係官庁や保険会社との折衝など、約80もの項目について支援している。事故の規模や緊急性を問わず、「24時間緊急サポートデスク」で対応する。


支援サービスを提供するスタッフはすべて日本アイラックの社員ですか。外部スタッフも活用していますか

 60人の正社員のうち8人がクライシスソリューション事業部に属して、サービスを提供している。出動した現場での経験値がモノを言う仕事なので、外部の方にはお願いしていない。8人中の6人が旅行業界の出身者だが、すでに旅行業法の知識があり、しかもリスク対策に関心があるような人は即戦力になりやすい。


支援サービスはどれくらいの頻度で利用されていますか

 死亡や重症に至る事故や、犯罪がらみ、行方不明など緊急性が高い案件は平均して月に1、2件あり、繁忙期には数も増える。それ以外の個人情報の漏えいや、「添乗員が全参加者のパスポートを失くした」など旅行会社の過失に起因するケース、そのほかコンサルティング的な業務も含めれば、スタッフは常に何かしらの対応をしている状態だ。