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デュシット、新CEOにIBM出身のタイ人女性、革新めざす

  • 2016年3月2日

CEOに就任したスタンパン氏  タイに拠点を置く国際的なホテルグループのデュシットインターナショナルから、今年1月にグループの新たな最高経営責任者(CEO)に就任したスパジー・スタンパン氏と、前CEOでこのほど執行役員会長に就任したチャニン・ドナバニック氏が来日し、本誌の単独インタビューに応えた。同社はドナバニック氏の母で、現在は名誉会長を務めるタンプイン・チャナット・ピヤウイ氏が、米国留学後の1949年にバンコクで創業。その後はドナバニック氏が後継者となりCEOを務めてきたが、3代目にして初めて外部の人材をCEOに選んだことになる。

 スタンパン氏は20年以上IBMに勤務し、ASEANグローバルテクノロジーサービス部門のゼネラルマネジャーなどを務めたのち、タイの通信衛星企業であるタイコムのCEOに就任しており、デュシットインターナショナルによれば「タイの経済界では名前の知れた人物」。これまでホスピタリティー関連業界とは縁のなかった、テクノロジー業界出身のスタンパン氏をCEOに選んだ理由として、ドナバニック氏は「母が創業した約60年前と今とでは時代が違うし、我々も急速に成長している。次の時代のニーズに応えられる人材が必要だった」と述べた。デュシットインターナショナルは現在、旗艦ブランドの「デュシタニホテルズ&リゾーツ」など4つのホテルブランドで約30軒を展開。タイなどの東南アジア諸国に限らず、中国や中東、米国などにも進出しており、今後3年程度でさらに40軒以上の開業を予定しているという。

スタンパン氏(左)とドナバニック氏  今後はスタンパン氏が経営を統括し、ドナバニック氏はこれまでに築いた人脈を活かして、スポークスパーソン的な役割を務める。スタンパン氏はタイを代表する国際的なホテルグループのCEOに就任した理由について、キャリアアップの良い機会となることや、タイでのホスピタリティ業界の成長に関心があったことを説明。今後は長期的な視点に立ち、戦略の策定、顧客情報の分析や管理、情報の共有・伝達、人材教育などの面で、これまでの経験を活かして技術革新を進める考えを示した。就任1年目の2016年については「まずは新体制の基盤を固めたい」という。

 スタンパン氏はIBM時代について「23年間にわたり勤務したが、経営を判断する立場の人間にタイ人はいなかった」と振り返った上で、今後は特に「タイ・ブランドの海外への発信」と「ホスピタリティー業界における人材教育」の2つに情熱を注ぐ考えを示した。デュシットインターナショナルは1993年にはタイ政府が認可した初めてのホスピタリティー学校として「デュシタニカレッジ」を開校し、その後も世界的に有名な料理学校のル・コルドン・ブルー、大阪の辻調理師専門学校などと提携するなど人材育成に注力していることから、同氏の目標の達成にとっては非常に適した環境だという。

デュシタニ・グアム・リゾートの外観  日本については「タイと中国に次ぐ、3番目に大きなマーケット」と説明し、昨夏にグアムで開業した「デュシタニグアムリゾート」への送客に意欲を示した。施設内では年末にミクロネシア最大規模のコンベンションセンターもオープンしており、今後は日本などからの大型インセンティブ旅行の獲得に力を入れる考え。同氏は「レジャーだけではなく『グアムといえばMICE』というイメージも定着させたい」と強調した。

 そのほか、日本国内での開業についても興味を示し、地価の高さなどが障壁となってはいるものの「積極的に用地を探している。今年中にも大都市で候補地を見つけたい」と語った。