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官民連携で地方創生、キーワードはICTと若者-じゃらんシンポより

地域の観光振興にICT活用を
若者に体験促しリピーター化へ

訪日客誘客で地方創生を
ソーシャルメディアを活用

全日空マーケティング室マーケットコミュニケーション部部長の吉田亮一氏  一方、NHマーケティング室マーケットコミュニケーション部部長の吉田亮一氏は、地方創生の取り組みの一環としてインバウンドの誘致について説明した。同氏は「地方と大都市の相互交流によって経営が成り立つエアラインにとって、地方創生は企業の至上命題になる」と強調し、「NHは国内で強いブランドだが、昨今では外国発の需要が国内発を上回るような状況もでてきた」と述べた。同氏はインバウンドの渡航先は「主要都市以外に行っていないわけではない」といい、インバウンドのニーズの多様性を指摘するとともに、地方への誘客の可能性を示した。

 このような背景を踏まえ、吉田氏は「特定の観光地を紹介するのではなく、色々な場所に行けるようにアクセスを整え、そこで何ができるのか情報を与えていくことが必要だ」と述べた。実際の取り組みとして、14年11月にはHISとANAセールスの合弁でインバウンド向けの旅行会社「H.I.S.ANAナビゲーションジャパン」を立ち上げ、富山県など地方と連携した取り組みを実施している。さらにインバウンド向けに特別割引航空券を設定したほか、日本の魅力を発信するウェブサイト「IS JAPAN COOL?」など、積極的に地方への送客や情報発信をおこなっているという。

 今後の展望としては、海外で日本の観光情報を発信している人を探し、「その発信者に向けてNHの特別割引運賃や旅行商品を紹介する」(吉田氏)ことで、潜在需要を顕在化する取り組みに力を入れていく考え。須崎氏も地方観光の情報発信について「従来は観光協会などが作成したパンフレットで『伊勢はこんなところですよ、ここがいいですよ』と情報を発信していたが、今後はソーシャルメディアの発展により、訪れた観光客が発信してくれるようになる」と述べ、「発信してもらえるような地域づくりに力を入れていきたい」と意気込みを語った。


地方創生に若者を巻き込む
体験フックにリピーター化へ

 パネルディスカッションでは、地方創生にどう若者を巻き込むかについても意見が交わされた。柴田氏は、伊勢市に修学旅行で訪れた人が大人になって再度伊勢を訪れることから、自治体に対し、若者が再度訪れたくなるような現地の体験を提供するよう提案。今後若者の誘客においては、その地が若者にとって「血縁ではない田舎」になることが、再訪の理由付けになるという。三越伊勢丹研究所ではJTBと共に現地での体験を促す取り組みの1つとして、石川県で料理人や三越伊勢丹のバイヤーと巡る地域の旅を1つの旅行商品として企画し、11月に催行する予定だという。

 また、吉田氏はマネージメントをおこなう立場から、「地方創生には強いリーダーシップを持った人が必要で、それは若者かもしれない」と若者に期待を示した。同氏は今後の事業展開について「若者が観光客を地域に呼ぶことに喜びを感じて、最終的にその取り組みをビジネスにつなげるような仕組みを作っていきたい」と述べ、行政に対して地方創生の核になる人がリーダーシップを発揮できるような環境をつくるなどのサポートを求めた。