官民連携で地方創生、キーワードはICTと若者-じゃらんシンポより

地域の観光振興にICT活用を
若者に体験促しリピーター化へ

シンポジウムには全国50以上の自治体や旅行業界関係者など約230名が参加した  じゃらんリサーチセンター(JRC)はこのほど、都内で「地方創生×若者(誘客&消費)×ICT」をテーマにシンポジウムを開催した。シンポジウムでは、JRCと伊勢市が若年層の誘客をはかり、昨年に共同で実施した取り組みを紹介。それをもとに有識者5名が地域づくりに対する課題や、民間企業での地方創生の取り組みについて活発な議論をおこなった。


モデレーター
リクルートライフスタイル じゃらんリサーチセンターエリアプロデューサー 木島達也氏

パネリスト
観光庁 地域資源課課長 長崎敏志氏
伊勢市 参事 須崎充博氏
全日空 マーケティング室マーケットコミュニケーション部部長 吉田亮一氏
三越伊勢丹研究所 食品担当ディレクター 柴田香織氏


JRCと伊勢市共同で若者を誘客
ICT活用、官民連携で再訪へ

リクルートライフスタイルじゃらんリサーチセンターエリアプロデューサーの木島達也氏  まず、シンポジウムではJRCエリアプロデューサーの木島達也氏が、JRCと伊勢市が共同でおこなった地方創生事業について紹介した。JRCでは国内旅行に関する調査・研究や地域への誘客の支援に取り組んでおり、そうした取り組みの一環として12年から伊勢市の地方創生事業を実施。同市とともにICTを活用した地域の現状分析調査や若者誘客のキャンペーンなどをおこなった。

 木島氏は冒頭で、伊勢観光の現状と課題について説明。伊勢市の観光統計によると、伊勢神宮への参拝者数は2013年は式年遷宮の効果で前年比76.9%増の1420万4816人となったが、14年は23.5%減の1086万5160人となり、以降も減少している。また、木島氏は修学旅行者数の推移についても言及。1989年の22万1379人から2014年は4万2825人と、5分の1にまで減少しているという。同氏は「伊勢市を訪れた観光客のほとんどは40歳以上で、以前に修学旅行などで伊勢を訪れてまた行きたくなったという人が多かった」といい、若年層の来訪機会の減少が今後のリピーターの減少に繋がると懸念を示した。

 この課題に対し、JRCと伊勢市は14年1月26日から3月22日まで、18歳から24歳までの若者を対象に伊勢市の魅力を発信するキャンペーン「初旅in伊勢」を実施。ICTを積極的に活用し、若者層の誘客をはかった。例えば、じゃらんネットで使える宿泊クーポンの配布や、主に若者を対象に地域で使えるクーポンを提供するスマートフォン用アプリ「マジ部」の活用など、リクルートグループが持つ既存のプラットフォームを利用した取り組みをおこなった。同時に、約130の小売店などの地元の事業者に会計や顧客管理など店舗運営をサポートする業務シェアアプリ「エアレジ」を提供し、キャンペーンによる経済効果を可視化した。

 約2ヶ月間のキャンペーンの結果、キャンペーン中にじゃらんネットで予約した若年層の人泊数は前年と比べて84.4%増加した。また、訪れた若者の99%が再訪する意向を示したという。

伊勢市参事の須崎充博氏  伊勢市参事の須崎充博氏は、キャンペーンをきっかけに旅館のじゃらんネットへの登録数が増加し、地域の観光関連団体がICTを活用し始めるといった変化が現れたと語った。また、同氏はキャンペーンを振り返り、旅館側にも「じゃらんのような大きな組織と協力し、送客してもらいたい」というニーズがあったことを示唆。民間企業の影響力を改めて感じたことも明かした。