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バリアフリー旅行をビジネスに-旅行前の対応が鍵

  • 2013年10月8日

会話をしながら信頼関係を構築、選任担当制で知識の蓄積へ

参加者を前にデモンストレーションを行うチックトラベルセンターの松本氏(左)とジャルパックの山木氏(右) セミナーでは、チックトラベルセンターのハートTOハート課長を務める松本泰守氏とジャルパック予約業務部業務グループツアーヘルプデスクマネジャーの山木照美氏が、それぞれ客役、旅行会社のカウンタースタッフ役となって、やり取りのデモンストレーションをおこなった。

 実演は、車椅子利用の妻とハワイへのハネムーンを予定している人からの相談、ペースメーカーを装着している人からの海外旅行の可否の問い合わせ、複数の持病の薬を海外に持参したいという人からの相談、という3ケース。典型的な質問を松本氏が発し、山木氏が、相手のペースに合わせながら適確に答えを引き出して行く様子が繰り広げられた。

客役の松本氏 実演後、松本氏は「シートを使っても、必要なことだけを機械的に聞いていくと警戒されることがある。少し長いやり取りになっても、会話の中からうまく答えを聞き出すことで信頼関係を築くことが大切」とアドバイス。旅行会社同士で情報を共有し、問題を相談し合うことも重要だと訴えた。

 実演を受けて田中氏は、会場に「ここまでできるかと思ったのが正直なところではないか」と問いかけつつ、「まずはカウンターか予約センターで誰か1人を担当者に決めること」を提案。「担当を決めずにその場その場で対応しているだけでは経験が積み上がらず、調べたものも無駄になる。情報、相談、連絡が担当者に集まる形にすれば、ノウハウがたまっていく。当社も含め、最初から対応できたわけではない」と自社の例を引き合いに、参加者に熱く訴えた。

カウンタースタッフ役の山木氏
 JATAバリアフリー旅行部会では、2013年度中に「ハートフルツアーハンドブック」をまとめ、来年度には、必要なものがダウンロードできるよう、JATAのホームページにアップロードする計画だ。この日、紹介されたのは「予約相談時編」「手配編」だが、基礎編として、添乗員や現地ガイド向けの「旅行実施時編」、さらに応用編として、疾病ごとの留意点解説やQ&A、資料編として、航空会社提出用書類サンプルや用語の基礎知識なども作成する予定とした。

 田中氏は「社会貢献としてだけでなく、利益を上げるビジネスとして対応できるマニュアルを作っている」と説明。「慣れないと、必要事項をすべて網羅するのは難しい。チェックシートの活用で、苦手とするバリアフリー対応を進めてもらいたい」と参加者に呼びかけた。

取材:佐藤淳子