
エイチ・アイ・エスは2月29日に開催した取締役会において、4月1日付けで代表取締役社長に現・取締役情報システム本部長の平林朗氏の昇格を決定した。同日、会見をした平林氏は「優良な経営基盤、知名度、東証一部上場と大きなものを受け継いだ。私の役割は、今まで成功を築いたビジネスモデルをゼロから見直し、もう一度、お客様の支持を得るビジネスモデルを構築すること」と述べ、鈴木社長が取り組んだ人事改革をいっそう進め、若手登用による活性化を図り、システム面での改良をすすめる考えを示した。

社長交代を決定したことについて、取締役会長の澤田秀雄氏は若返り人事であるとし、「どの産業でも30年ほどで成長期を迎える。HISも28年間成長してきた。これから数年間は(今のモデルでも)いけるが、グローバルに戦える企業に向けた備えをするため、思い切った若返り」と説明。2桁成長にもかげりがあるとし、「もう一度2桁を」と語り、新社長の抜擢による新しい考え、新しい体制での巻き返しに期待を示した。また、代表取締役の鈴木社長、行方専務が取締役相談役として「後ろからサポートし、私も支援する」と、創業時のメンバーが若返りする体制を全面的に支援していく。特に、澤田氏は「新社長は若さ、元気さ、新鮮さは時代にあう。ただし、社長としての経験値は私のほうが長く、足りないところはアドバイスをしたい」といい、1年から2年で軌道にのって欲しいとの考え。
HISは平均年齢が若いことでも知られるが、現在の平均は27歳から28歳ほど。「まだ大きなチャンスがあることを受け止めて欲しい」とし、創業当初のベンチャー精神をうちだす改革となりそう。平林氏は「トップダウンから、決裁権が下に行くような組織とし、ベンチャー型の組織を作りたい」と語っており、今後は社内で若手の抜擢も多くありそう。こうした活性化策により、主力の海外旅行のほか、国内旅行、インバウンドとそれぞれの分野で事業の基礎を改めて確立していく。
また、今後のビジネスモデルについて平林氏は、「インバウンド、国内も含めて見直すが、個人自由旅行を中心に据える」としてHISの原点を保ちながら、変革を見いだしていくと強調。課題として、インターネット、オンラインでの誘導、店舗とオンラインの融合が課題とした。また、「旅行業と情報産業の境界がなくなりつつある。(旅行の)仕入れて粗利を乗せて販売することと異なる情報産業がある。この分野を取り組まなければならない」と今後の方向性についても示した。
▽グローバル化への対応−HISらしく

グローバル化への対応について澤田氏は、「海外に70店舗を展開し、点での構築はできた。次は面の戦い」として、バンコク支店の例にあげ、「バンコク、あるいはタイでベスト3から、1位になる脱皮をしていく」と、世界各地で同様の展開をめざしていく。特に、アジア各国では海外旅行市場が急速に拡大しているほか、ヨーロッパ、中東などを含め、「各地域に本部ができていくのでは」と語り、「5年から10年で海外での売上比率が高まる」などとし、急成長をする海外での旅行ビジネスの展開について取り組む構想のようだが、詳細の言及は避け、「次期社長に期待をしたい」と述べた。
ただし、こうした展開はすぐに着手するものではない。「新社長は日本(市場)で準備し、システムも含めた展開を整備していく」とし、毎年2桁成長を維持するHISの経営方針に着実に海外市場での展開があることを示した。
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