日本の旅行業界の商習慣、グローバル化に対応を−対等関係が原則

ホテルを代表したマリオット・インターナショナルの勝野邦男氏は「日本の商習慣に対応してきたが、必ずしも通らなくなっている」と指摘。「日本のビジネスが要らないホテルはまだ無い」としつつ、中国との比較から日本の商習慣の変化の必要性に言及。日本ツアーオペレーター協会(OTOA)会長の井上照夫氏はOTOA会員対象に実施した調査から、前払い46%、30日以内の後払い32%、31日から45日以内の後払いが35%、46日から60日の後払いが37%となっており、前払いは中小で、後払いは大手が多いという傾向を紹介。ホテル、バスなど支払いを早くすることで信用を高めることができ、取消料など消費者を保護しすぎる点についても国際的な基準に合わせる必要があるとの考えも示した。
ジェイティービー取締役旅行事業本部副本部長の日比野健氏は、海外のオペレーターがDMC(デスティネーション・マネジメント・カンパニー)に転換していることをあげ、「JTBでも沖縄、京都、北海道を拠点に『DMC』的にオペレーションを進めている」とし、世界的な流れと日本の政策と連携し、「ツーウェイチャーターなどで(日本のオペレーターが主導して)現地で集客し、席を埋めることで、対等関係が見えてくる」とした。
パネリスト各氏からは業者間のコミュニケーション不足でミス発生につながっていること、一部の旅行会社は契約書サイン後に条件変更するなど、実務面でコンプライアンス的な視点から疑問符の付く取引実態も指摘された。日比野氏はJTBの例として、社内規範で遵法精神のほか契約の不履行や公明・公正なパートナーシップの遵守について「襟を正している」とコメント、こうした改善にむけて各氏ともコミュニケーションで蜜に、かつITを活用した早い対応が鍵となるという。
会場からは、欧米と全く同じ仕組みで取消料の収受とはいかないものの、旅行会社が再販できる仕組みも考慮しながら、グローバルスタンダードに歩み寄ることができるような取消料発生日の設定、取消料保険の充実化を検討し、あわせて早期予約の慣行を推進すべきという意見が寄せられた。
ファシリテーターを務めたウニベルツール代表取締役会長の渡辺淳二氏は観光立国の理念にも触れ、「旅行会社、サプライヤーなどの枠組みを超え、受け入れ、送り手の側も両方の喜びとなる現地に評価されるツアーとならないと今後の成功につながらない」と語り、こうした問題に実直に取り組むよう提案した。