ビジネストラベラー:リスク情報は早く確実に

  • 2007年8月29日


今回はコマツ建機・マーケティング本部海外営業本部販売促進部主査で、世界各地での営業活動を担当している柳楽篤司(なぎら・あつし)氏に登場していただいた。エンジニアとして新機種の商品企画を担当した後、現在はその販売促進も手掛けるという同氏は、日本ではまだあまり知られていない世界の国々へも訪れる機会がある。今回はこうした氏の経験も踏まえ、ビジネス旅行、印象的な地についてお話を伺った。

(聞き手:山見インテグレーター代表、山見博康氏)
※2006年2月、月刊トラベルビジョン掲載


海外出張は加速的に増加

Q:これまで訪問した国は、どういったところでしょう

 仕事では、アメリカ、イギリスをはじめ、トルコ、UAE、アフガニスタン、アゼルバイジャン、タジキスタン、ウズベキスタン、カンボジア、南アフリカ、ケニア、ガーナ、アンゴラなどです。

 プライベートでも様々な国を訪れました。カナダ、オーストラリア、オーストリア、ハンガリー、スペイン、モロッコ、チュニジア、ポルトガル、インド、エジプトなど。全て合わせると25ヶ国以上になりますね。

Q:仕事での出張目的とはどのようなことが多いですか

 現在の仕事では、油圧ショベルの新型機導入支援、セールスプロモーション、及び社会貢献の一環として開発した対人地雷除去機の紹介活動などが主な目的です。

Q:対人地雷除去機の仕事では、どのような国々に行かれたのですか

 私は元々エンジニアで、商品企画の頃から、この機種の開発を手掛けておりました。国のプロジェクトなどとの関係で、今までにアフガニスタンやカンボジアなどへの出張がありました。それらの国々は、例えばカードが使えない、FAXはおろか電話も使えない等、先進国では考えられないようなホテル事情のケースもあるのです。

Q:御社の海外出張者数はどのくらいでしょう。また、海外への出張は増えますか、増えるならば、どの地域でしょう

 弊社は、海外売上比率が約70%にものぼります。全社の数は把握していませんが、毎年数えきれない出張者にのぼるでしょう。

 今後、さらに現地化は進むものの、出張者数は世界全体で伸びるのではないでしょうか。弊社は同業他社に比べていち早く海外展開を行ってきたので、どの地域が弱いということはありません。これからどの地域が増えるというよりもむしろ、全世界的に出張の機会が増えると思います。


リスク情報は早く確実な提供を望む

Q:旅行社の指定はありますか

 弊社は、ジェイティービーに包括的に委託しています。現在までのところ、特に大きな不自由は感じていません。ただし、個々にはもっと小回りを利かせて欲しいとか、もっと迅速に対応して欲しいとの要望はあります。

 ホテルは、弊社の現地法人や販売代理店が勧めるホテルが安心で確実です。その場合、インターネット環境があることが必須要件ですね。

Q:企業として旅行会社に求めるサービスについてお聞かせ下さい

 もっとも重要な事は、やはり手配の確実性でしょう。それに臨機応変さ、いわゆるフットワークが良いことですね。特に、ビザ取得に時間がかかる国へ行くことが多いので、短期間で素早く取得してくれると助かりますね。

 また、リスクに関するニュースはできるだけ、前もって提供して欲しいものです。先日、南アフリカに出張している際にちょうど、航空会社のストライキが発生したのです。ただ、このような情報は事前に何らかの動きがあったはずです。そんな情報があれば、早く出発するとか逆に数日間でも出張を延期するとか、あらかじめ対応を検討できるのです。こういう危機発生の情報を事前に把握し、流してくれるような旅行会社は重宝されるでしょう。

Q:サービスに対しての要望はありますか

 海外で日程変更があった場合などに良く思うのですが、日本で24時間サービスをしてくれるとありがたいですね。今、こういうサービスをやっている会社は無いでしょうが、きっとそんな会社が現れることを期待しています。誰もが望んでいるサービスですから。

Q:海外出張時の座席の規程はありますか

 上層部についてはファースト・クラスやビジネス・クラスですが、部長以下のほとんどの実務者はエコノミーです。ただ、飛行航続距離が長い場合等は座席をグレードアップするとか、臨機応変な対応もしています。


主力の観光地以外でも面白い

Q:世界各地を訪問し、印象に残る町はどこですか

 先進国から発展途上国までいろいろ訪問しましたが、それぞれ印象深く良い所が多い、というのが全体の感想です。その中で今、思い出すのは、1992年にプライベートでモロッコへ一人旅した時です。カサブランカからアトラス山脈をバスで越え、サハラ砂漠の入り口の町、ザゴラに行ったのですが、その途中バスから見た雄大な景観と自然の美しさには心を奪われました。

 また、ザゴラもこじんまりした町で、土漠の中にポツンとあるそのたたずまいが忘れられませんね。

 このルートは「地球の歩き方」を見て知ったのですが、主力の観光地でないものの何か面白そうに思ったのです。

Q:他にも訪れた経験から、推奨する地はありますか

 そうですね。他に、カンボジアのアンコールワットの遺跡でしょう。ここはお勧めです。また独身だった頃は、会社のリフレッシュ休暇を利用して、インドやエジプトなど多くの国を訪れました。弊社では、年に5日は連続有給休暇を取るようになっていますので、前後の週末をいれて9日間の休暇がとれます。弊社では、ほとんどの社員がこの機会を利用して海外や国内旅行を楽しんでいるようです。

Q:これまで、ハプニングな出来事や思い出はありますか?

 そうですね。パキスタンのイスラマバードに滞在したときのことです。ホテルに着くと、物々しい警戒体制でSPらしき人物がうろうろしていて、何か異様な雰囲気だったのです。「何事だろう」と思い、こっそりボーイに聞くと、アフガニスタンのカルザイ大統領が同じホテルに泊まっているというので、驚きました。姿を見ることは無かったのですが、警護車を連ねて出発する光景は、窓から見えました。


自分なりのチェックリストを作ること

Q:旅行準備で気をつけていることは

 準備は自分で作ったチェックリストを見ながら行います。毎回必ず持参するものは、常備薬です。それには、ハンドクリーム、ピタリット(大正製薬)という下痢止め、整腸剤としてのウコンは欠かせません。衛生状態の良くない地域に行くことが多いので必需品です。それに風邪薬。これはホテルが結構冷えることがあるからです。

 変わったところでは、トイレットペーパーがあります。仕事柄、現地に着いて、長時間、車で移動する場合には有用なのです。また水が悪いところに行くのでいつ下痢するかわかりませんし・・・。

 それに、パソコンや携帯電話はいうまでもありませんが、海外アダプタ変換器一式やテーブルタップも必需品です。また充電器などの電気製品は240Vまで使えるものが必要です。それに、薄いリュックサックも必ず持参します。現場作業のとき、水や書類等をこれにいれておくと、両手があいて安心です。作業の邪魔にもならないし。それに熱射病対策のための帽子は忘れません。

 大体、2週間くらいの出張が多いのですが、衣類は背広が1着にネクタイ1〜2本。それに作業着が1着から2着。それにボタンダウンのシャツ、これはノーネクタイでもいいケースが多いからです。下着は3枚くらいであとはホテルで洗濯します。また、出張に出る前日には、免許証やATMカードなど、日本でしか使えない不要なカードは抜いておきます。

Q:失敗談などありますか?また、安全に関する対策も教えてください

 失敗したと言えるようなことは幸いありません。パソコンや書類など貴重品はすべて、小型の布製ではないスーツケースに入れて、いつも手元から離さないようにしています。機内にも持込める鍵の付いたカッチリしたものです。外出するときは、貴重品はすべて内ポケットに入れるようにしています。

Q:次回の出張、あるいは家族旅行はどこに行かれますか

 直近の出張としては、今月初めのトルコ、UAEなどでした。

 家族旅行についてですが、もうすぐ3歳になる息子とは一緒に海外旅行したことはないので、行くとすれば、時差もなく、過ごしやすいオーストラリア北部のケアンズなどが良いでしょう。


柳楽 篤司(なぎら・あつし)氏
コマツ建機
マーケティング本部海外営業本部販売促進部主査

1990年 入社 開発本部建機研究所配属
2002年 開発本部 商品企画室
2004年から 現職