ビジネストラベラー:可能な限り良いホテルを予約すべし
今回、ご登場をいただく三菱化学総務部法務グループの矢野功氏は、ビジネス旅行、プライベートの旅行と経験豊富。ビジネスでは世界各地を巡り、プライベートではヨーロッパをドライブ旅行するなど、海外でも積極的な行動をされている。矢野氏には各種の対応や興味深い経験を伺った。(聞き手:山見インテグレーター代表、山見博康氏)
※2006年4月、月刊トラベルビジョン掲載
Q:これまで訪問した国はどんな国ですか?
出張ではアメリカ、カナダ、中国、韓国、台湾、香港、シンガポール、タイ、南アフリカです。また、個人の旅行では、英国、フランス、スペイン、ポルトガル、イタリア、スイス、ドイツ、ペルー、ブラジルがあります。個人で訪問した国が多いのは、米国駐在時代に休みを利用して行きやすい国々を訪ねたからです。
例えば、日本発とは違い、ニューヨークから欧州へ訪問することは、意外と簡単です。例えば、金曜日の夜にニューヨーク発のフライトを利用すると、土曜日の朝7時前にはロンドンに着きます。帰りは、日曜日の夕方6時ころの欧州発に乗ると、ニューヨーク着は時差の関係で夕方8時には到着。つまり、ヨーロッパであれば土日だけで2日間を過ごすことができます。また、アメリカと南米にはほとんど時差がないことも、訪ねやすい理由ですね。
Q:御社では旅行会社を指定されていますか?
出張で海外にいくときは、菱和ダイヤモンドサービスとジャルトラベルにお願いしています。両社とも海外出張中も日程変更やフライト変更・ホテル変更などをテキパキと処理していただけるので、実にありがたく思っています。
Q:企業として旅行会社に求めるサービスの順位はいかがでしょうか?
旅行会社に求めるのは、コストもさることながら、いろんな事態に際しての柔軟に対応してくれる臨機応変な対応力ですね。
これにはトラブル時の対応も含んでのことです。また、チケット手配の手続きではどこでも差はあまりありません。しかし、前の方の座席をとってくれるかどうかは、細かい注文かもしれませんが、実際に差が大きいですね。座席が前か後ろかで入国審査が終了するまで30分くらい違うこともありますので。
Q:旅行の準備で気を配る点は?
海外でのホテルはしっかりしたホテルに泊まることです。日本での旅行は安いホテルでも構わないのですが、海外では万一の場合の対応力がホテルによって違います。
2003年のことだったと思います。香港への出張途中、機内でどうにも歯が痛くなったのですが、ホテルのコンシェルジェが良い医者を紹介してくれ、事なきを得たことがあります。
私の英語力では具体的な症状をうまく説明するのは難しいのですが、良いホテルであれば、このような細かいサービスの部分が違いますね。
◆9.11 テロ
Q:何かハプニングな出来事や思い出はありますか?
もっとも強烈な出来事は、2001年の9.11事件を目撃したことです。
あの日の朝、通勤途中の車の中で貿易センタービルにセスナ機か突っ込んだらしい、という話をラジオで聞いたのですが、会社に行った直後から大変な騒ぎになりました。
駐在時代のオフィスは、マンハッタンからは離れていたのですが、オフィスからは、貿易センタービルがちょうど見えるのです。何が起きたか分かった直後に最初に行なったのがグループ会社を含めた社員およびその家族の安否確認です。幸いにも当日の午後早くには、全員の無事が確認でき、安心しました。
一方で、日本からの出張者が50名ほどアメリカにいることが分かったのですが、出張で全米中に散らばっておりましたので、所在と安否の確認が大変でした。ほとんどの出張者はすぐ確認がとれたのですが、中には海外出張が初めての社員もいましたし・・・。最後の一人の確認がとれたのは確か5日目でしたが、オフィスからはさほど離れていないマンハッタンにいたのです。地方の都市にいた出張者を駐在員が6時間かけて迎えにいったこともありました。いずれにせよ、全員が無事で何よりでした。しかし、多くの方々が命を落とされ、痛ましい日でした。テロのない世界が来ることを祈っています。
2週間くらいしてから貿易センタービルのあった近くに行ったのですが、焼けたビルを目の当たりにして衝撃的でした。それに臭いがきつく、いまでも覚えています。
Q:海外滞在時での失敗談があれば、安全への秘訣と合わせてお聞かせ下さい。
これまでは幸い、大きな失敗はありません。
ただ、一度、危ない目にあったことがあります。
ある日曜日の昼間のことです。マンハッタンのミッドタウンも日曜日はオフィス街は人通りがないのですが、誰もいない通りを歩いていく2メートル近くある黒人がいきなり現れ“Give me money ! ”と言うのです。「金は持っていない」と言っても後をついて来たのですが、運よく前から人が歩いてきたので事無きを得ました。
危ない目といえば、それだけですが、海外での安全策は、まず危ないところに近づかないことが原則と思います。臆病とかいう問題でなく、外国人である我々はどんな種類の危険があり、どの程度危ないのかを知りませんし、何かあったときの危機管理能力が日本にいるときほどありません。よく言われることで、どの国でも言えることですが、「いつでも警戒しておく」ことは外国では常識です。日本人の感覚で安全だ安易に判断してしまうので、危ないと思います。とにかくどんな場合も楽観視しないことが身を守る唯一の術です。
また、当たり前の話ですが、荷物から、ぜったい目を離さないことですね。
◆印象に残る町、2度の世界一周
Q:世界の各地に旅されてもっとも印象に残っている町はどこでしょうか?
どこの国もそれぞれ良い所があり、思い出深いのですが、その中でも、南米は印象的でした。南米というと、治安が非常に悪く、貧富の差も激しいというイメージで、これも事実ではありますが、南米の人々はとにかく明るく、エネルギーに満ち溢れています。
また、2002年から2004年にかけては、南アフリカへ数度に渡る出張の機会がありました。アフリカの国というとサバンナや砂漠のイメージが強いのですが、南アフリカは、緑も多く、気候もいいし、本当に美しい国です。ただし、ヨハネスブルグの治安は余りよくないところもあるので、出張や旅行に行かれる方は、事前の状況を現地に確認するなどよく注意された方がよいと思います。
異質な美しさでいえば、ペルーのクスコですね。遺跡のすごさには圧倒されましたし、現代の技術でも不可能だろうというような不思議な遺跡がいくつもあって実に感激しました。
Q:面白い旅行も経験されているようですね?
今までに2度、世界一周をしました。最初は2003年のことです。東京を出発し、アメリカ・ニューヨーク、南アフリカ、シンガポール、東京へ戻るという行程で、1週間の日程のうち45時間くらいは機内で過ごしました。
これは東周りで、感想としては太陽の方に向かって飛ぶのはとにかく疲れます。着いた先で、夜中になっても、前の国ではまだ夕方くらいの時間ですから、なかなか寝つけずに睡眠不足になったのを憶えています。
もう1度についても、東京を出発し、ドイツ・ミュンヘン経由で南アフリカへ行き、そこからヨーロッパに戻った後にアメリカ経由で東京に戻りました。この行程は西回りだったので楽でしたね。つまり、いつも夜更かし、その後は寝坊をする、というパターンで自分にはあっていました。日本にいれば「ぐうたらな生活」と言われそうですが、この旅程はあまり苦になりませんでした。
Q:次に家族で旅行される場合、どこに行きますか?
これまで、家族ではヨーロッパに3度ほど行きました。実は、この8月に住み慣れたニューヨークに遊びに行くことを計画しています。
家内は10歳までイリノイ州にいた帰国子女ですし、その後、アメリカに駐在していたので、英語はネイティブと同じように話します。現在も英語を使う仕事をしているので、私には残念ですが私とはレベルが違います。そこで旅行に出ると現地でのことは任せきりです。他の人の話を聞くと、海外で家族旅行となると旦那さんが大変と聞きますが、私としては家族旅行はいつも楽ですね。(笑い)
※2006年4月、月刊トラベルビジョン掲載
Q:これまで訪問した国はどんな国ですか?

例えば、日本発とは違い、ニューヨークから欧州へ訪問することは、意外と簡単です。例えば、金曜日の夜にニューヨーク発のフライトを利用すると、土曜日の朝7時前にはロンドンに着きます。帰りは、日曜日の夕方6時ころの欧州発に乗ると、ニューヨーク着は時差の関係で夕方8時には到着。つまり、ヨーロッパであれば土日だけで2日間を過ごすことができます。また、アメリカと南米にはほとんど時差がないことも、訪ねやすい理由ですね。
Q:御社では旅行会社を指定されていますか?
出張で海外にいくときは、菱和ダイヤモンドサービスとジャルトラベルにお願いしています。両社とも海外出張中も日程変更やフライト変更・ホテル変更などをテキパキと処理していただけるので、実にありがたく思っています。
Q:企業として旅行会社に求めるサービスの順位はいかがでしょうか?
旅行会社に求めるのは、コストもさることながら、いろんな事態に際しての柔軟に対応してくれる臨機応変な対応力ですね。
これにはトラブル時の対応も含んでのことです。また、チケット手配の手続きではどこでも差はあまりありません。しかし、前の方の座席をとってくれるかどうかは、細かい注文かもしれませんが、実際に差が大きいですね。座席が前か後ろかで入国審査が終了するまで30分くらい違うこともありますので。
Q:旅行の準備で気を配る点は?
海外でのホテルはしっかりしたホテルに泊まることです。日本での旅行は安いホテルでも構わないのですが、海外では万一の場合の対応力がホテルによって違います。
2003年のことだったと思います。香港への出張途中、機内でどうにも歯が痛くなったのですが、ホテルのコンシェルジェが良い医者を紹介してくれ、事なきを得たことがあります。
私の英語力では具体的な症状をうまく説明するのは難しいのですが、良いホテルであれば、このような細かいサービスの部分が違いますね。
◆9.11 テロ
Q:何かハプニングな出来事や思い出はありますか?
もっとも強烈な出来事は、2001年の9.11事件を目撃したことです。
あの日の朝、通勤途中の車の中で貿易センタービルにセスナ機か突っ込んだらしい、という話をラジオで聞いたのですが、会社に行った直後から大変な騒ぎになりました。
駐在時代のオフィスは、マンハッタンからは離れていたのですが、オフィスからは、貿易センタービルがちょうど見えるのです。何が起きたか分かった直後に最初に行なったのがグループ会社を含めた社員およびその家族の安否確認です。幸いにも当日の午後早くには、全員の無事が確認でき、安心しました。
一方で、日本からの出張者が50名ほどアメリカにいることが分かったのですが、出張で全米中に散らばっておりましたので、所在と安否の確認が大変でした。ほとんどの出張者はすぐ確認がとれたのですが、中には海外出張が初めての社員もいましたし・・・。最後の一人の確認がとれたのは確か5日目でしたが、オフィスからはさほど離れていないマンハッタンにいたのです。地方の都市にいた出張者を駐在員が6時間かけて迎えにいったこともありました。いずれにせよ、全員が無事で何よりでした。しかし、多くの方々が命を落とされ、痛ましい日でした。テロのない世界が来ることを祈っています。
2週間くらいしてから貿易センタービルのあった近くに行ったのですが、焼けたビルを目の当たりにして衝撃的でした。それに臭いがきつく、いまでも覚えています。
Q:海外滞在時での失敗談があれば、安全への秘訣と合わせてお聞かせ下さい。

ただ、一度、危ない目にあったことがあります。
ある日曜日の昼間のことです。マンハッタンのミッドタウンも日曜日はオフィス街は人通りがないのですが、誰もいない通りを歩いていく2メートル近くある黒人がいきなり現れ“Give me money ! ”と言うのです。「金は持っていない」と言っても後をついて来たのですが、運よく前から人が歩いてきたので事無きを得ました。
危ない目といえば、それだけですが、海外での安全策は、まず危ないところに近づかないことが原則と思います。臆病とかいう問題でなく、外国人である我々はどんな種類の危険があり、どの程度危ないのかを知りませんし、何かあったときの危機管理能力が日本にいるときほどありません。よく言われることで、どの国でも言えることですが、「いつでも警戒しておく」ことは外国では常識です。日本人の感覚で安全だ安易に判断してしまうので、危ないと思います。とにかくどんな場合も楽観視しないことが身を守る唯一の術です。
また、当たり前の話ですが、荷物から、ぜったい目を離さないことですね。
◆印象に残る町、2度の世界一周
Q:世界の各地に旅されてもっとも印象に残っている町はどこでしょうか?
どこの国もそれぞれ良い所があり、思い出深いのですが、その中でも、南米は印象的でした。南米というと、治安が非常に悪く、貧富の差も激しいというイメージで、これも事実ではありますが、南米の人々はとにかく明るく、エネルギーに満ち溢れています。
また、2002年から2004年にかけては、南アフリカへ数度に渡る出張の機会がありました。アフリカの国というとサバンナや砂漠のイメージが強いのですが、南アフリカは、緑も多く、気候もいいし、本当に美しい国です。ただし、ヨハネスブルグの治安は余りよくないところもあるので、出張や旅行に行かれる方は、事前の状況を現地に確認するなどよく注意された方がよいと思います。
異質な美しさでいえば、ペルーのクスコですね。遺跡のすごさには圧倒されましたし、現代の技術でも不可能だろうというような不思議な遺跡がいくつもあって実に感激しました。
Q:面白い旅行も経験されているようですね?
今までに2度、世界一周をしました。最初は2003年のことです。東京を出発し、アメリカ・ニューヨーク、南アフリカ、シンガポール、東京へ戻るという行程で、1週間の日程のうち45時間くらいは機内で過ごしました。
これは東周りで、感想としては太陽の方に向かって飛ぶのはとにかく疲れます。着いた先で、夜中になっても、前の国ではまだ夕方くらいの時間ですから、なかなか寝つけずに睡眠不足になったのを憶えています。
もう1度についても、東京を出発し、ドイツ・ミュンヘン経由で南アフリカへ行き、そこからヨーロッパに戻った後にアメリカ経由で東京に戻りました。この行程は西回りだったので楽でしたね。つまり、いつも夜更かし、その後は寝坊をする、というパターンで自分にはあっていました。日本にいれば「ぐうたらな生活」と言われそうですが、この旅程はあまり苦になりませんでした。
Q:次に家族で旅行される場合、どこに行きますか?
これまで、家族ではヨーロッパに3度ほど行きました。実は、この8月に住み慣れたニューヨークに遊びに行くことを計画しています。
家内は10歳までイリノイ州にいた帰国子女ですし、その後、アメリカに駐在していたので、英語はネイティブと同じように話します。現在も英語を使う仕事をしているので、私には残念ですが私とはレベルが違います。そこで旅行に出ると現地でのことは任せきりです。他の人の話を聞くと、海外で家族旅行となると旦那さんが大変と聞きますが、私としては家族旅行はいつも楽ですね。(笑い)
矢野功(やの・いさお)氏
三菱化学株式会社 総務部法務グループリーガル・アドバイザー
1989年 入社、四日市事業所事務部
1993年 本社総務部法務グループ(商事法務・契約法務)
1998年 三菱化学アメリカ社ニューヨーク本社法務
2002年 本社総務部法務グループ、現在に至る