ビジネストラベラー:価格よりトラブル時の即応性を

(聞き手:山見インテグレーター代表、山見博康氏)
※2006年3月、月刊トラベルビジョン掲載
◆海外出張は加速的に増加
Q:これまでどちらの国々を訪問されていますか
仕事では、アメリカ、カナダ、メキシコ、アルゼンチン、韓国、香港、台湾、中国、タイ、シンガポール、インドネシア、ベトナム、英国、オランダ、ドイツ、フランス、スペイン、スウェーデンなど。プライベートでは、バハマ、ベリーズなど、合計で20ヶ国以上になりますね。
Q:どのような目的で、出張されますか
私の出張目的は、現地法人でのミーティングほか、顧客周りや営業支援が多いですね。
弊社は昨年100周年を迎えましたが、1905年の創業当初から、鋳鍛鋼事業や機械事業を手がけており、現在は鉄鋼・溶接、アルミ・銅、機械エンジニアリングが主力。最近では神戸市での発電事業が加わり、歴史的に複合経営を進めてきた独創的な会社です。
その中で私の所属する溶接カンパニーは、日本での溶接材料シェアの半分弱を占め、国内第1位。製品開発や生産技術でも、世界に冠たる技術力を持っています。私はアメリカや韓国の現地法人での勤務を経験したのですが、実は神戸製鋼の中でも溶接カンパニーは最も早く現地生産拠点を造っており、国際化が進んでいると言えます。
Q:現在、御社の延べ海外出張者数はお分かりになりますか?また、出張の増える地域はどこでしょう
具体的な出張者数は分かりませんが、全社的に増えているようです。行き先は特に、中国をはじめとしたアジア。それにロシアとインドは急増しているでしょう。
溶接カンパニーでは、アジアのほか、ドバイをはじめとする中近東にも需要開拓のために出張したいと考えていますが、イラクなどは、情勢不安などカントリーリスクが大きく、行くにいけない状況で困っているところです。
Q:旅行会社の指定はありますか
子会社のコベルコビジネスサポートのツーリスト部が、私たちの業務内容もよく解って手配してくれますので、何にも注文はありません。ただ、ホテルの手配は自分でするか、現地の人にお願いをしています。
まあ、日本の旅行会社のサービス・レベルは外国と比べると圧倒的に親切。至れり尽くせりといったところです。海外の旅行会社はとにかく不親切ですね。
Q:企業として旅行会社に求めるサービスの順位はいかがでしょうか?
もっとも重要なのは、手配の確実さですね。また、価格よりもトラブルの即時対応でしょう。
Q:海外出張時の座席の規程はありますか?
社内の運用ルールを基に、距離や目的地などに応じ、最も業務効率の良いように臨機応変に決めています。

Q:旅行準備で気をつけていることはありますか?
出張はだいたい1週間以内。決まって準備しているものは無いのですが、預けなくてよい大きさのバッグに全部詰め込むことにしています。
背広は一着だけ。カッターシャツや下着は日数分用意します。不精ですから洗濯などはしたくないのです。東アジアの国を除くと、どのホテルにもアイロンやズボンプレッサーがあり、しわくちゃになった時にはそれを使います。
薬は持参せず、必要あれば現地で買います。帽子などは持っていきません。
Q:体調面で配慮していることはありますか
やはり、水です。絶対に生水は飲みませんね。すべてミネラルを飲み、とくに氷は避けます。また、生野菜は絶対にダメです。つまりは火がよく通ったものだけを食べることですよ。
これまで運よく、海外で病気などしたことはありません。
Q:安全に関する秘訣は何でしょう?
盗難などに遭ったことは幸いにもありません。いろいろと注意しているからでしょう。例えば、かばんを床に置く時などは必ず足の間に挟んでおき、絶対に身体から離さないようにしています。夜の一人歩きはせず、アメリカではできるだけ知人の車で送迎してもらい、タクシーにもできるだけ乗らないようにしていました。
ヒューストン駐在中のこと。日本人はだいたいお金を身につけて外出すると思われており、強盗に狙われやすかったのですが、ある時、日本料理店に強盗が入り、小銃を乱射、商社の人が撃たれ大騒ぎになったことがありました。幸い、軽傷だったのですが、その事件以来、そのレストランには足が遠のきましたね。
Q:外出の時にパスポートなど持って出ますか?
私は、パスポート・エアチケットとお金など大事な物はすべて内ポケットに入れて外出しますが、これまで問題はありませんでした。ホテルに置いていく方が、むしろ恐いのです。
Q:これまでご自身がハプニングに遭遇したことはありますか?
米国駐在時のことです。ヒューストンからニューヨークへ出張する際、機体の調子が悪いという理由で、フライトがキャンセルになってしまいました。どうしても翌朝のミーティングに出席する必要があり、何とかならないかと航空会社に頼み込んだのです。
そうすると、「貨物便ならある」という。その貨物便に客席は無く、20人ほどが座れる座席があるだけ。午前1時頃に出発し、6時間後にニューヨークに到着できるというのです。「それでよければ問合せてみてもいい」との回答に、何が何でもミーティングに出なければと頼んだところ、運よく一枚取れたのです。
急遽、深夜に貨物便搭乗口に向かったところ、そのゲート以外の電気は消えて真っ暗。そこにヒッピーのような格好の者や、学生らしい若者が床に座って待っていました。彼らと一緒に何とかニューヨークにたどり着くことができたというハプニングがありました。
良かったことは、ただ運賃が半値以下だったことでしょうか。まあ、緊急時には、こんなフライトもあるということです。
◆家族で楽しんだバハマ・ベリーズ
Q:世界の各地に旅されてもっとも印象に残っている町はどこでしょうか?
いろんな国を回り、それぞれ印象的なところが多いのですが、強いてあげれば、アメリカのグランドキャニオンやナイアガラの滝の雄大さには感動しました。
また、「赤毛のアン」で有名なカナダのプリンスエドワード島は、その物語が書かれた百年前そのままの風景が残っています。「女性の旅行したい場所ベスト・・・」にも入る人気の場所と聞きますが、訪れたら感動することは間違いないでしょう。
珍しいところでは、メキシコとホンジュラスの間にある小さな国ベリーズはとても印象的でした。首都から小さな島に6人乗りのセスナ機で飛んだのです。そんな小さな飛行機は初めてだったし、揺れるので、早く着いてくれと祈るような気持ちでした。
小さな島なので、町と云っても大きな建物としては、教会とホテルがそれぞれひとつずつ、それにペンションのような建物があるだけ。外食できる店も5、6軒のみ。外国人観光客はいるものの、日本人は私たち家族だけでした。
海岸線でひなたぼっこし、カリブ海を見ながら、青い空と自然を満喫するにはとても素晴らしいところです。スキューバダイビングができるのも魅力ですね。家族で10日間ほど、のんびりできたのは忘れられない思い出になっています。ガイドブックには載っていない穴場とも言えるでしょう。
穴場といえば、注意しなければならないことはガイドブックに、「ここは面白い穴場だ」と紹介されている場合。現地の人が絶対に近づかないような場所が、むしろ穴場と紹介されているケースがあるので、訪れた場合にも安心せず、「危ない」と感じたら自分の判断に頼るほうが良いと思います。
Q:家族旅行はいかがですか?次に行くとしたらどこに連れて行きたいと思いますか?
これまでバハマとベリーズなどに行きましたが、将来、家族旅行するとなると、やはりイタリアのフィレンツェに行ってみたいですね。歴史があり、美術と美しい町並みなど魅力的ですね。実は私も行ってないのでぜひ家族で楽しみたいものです。
東條正和(とうじょう・まさかず)氏
神戸製鋼所溶接カンパニー国際部長
1972 年 入社、大阪支社溶接棒事業部溶接販売部販売企画課
1980 年 名古屋支社溶接販売課
1984 年 アメリカ・ヒューストン駐在
1990 年 KOBELCO WELDING OF AMERICA INC. 社長(初代)
1992 年 大阪支社溶接棒事業部営業部大阪第二販売室長
1998 年 KOBE WELDING OF KOREA CO.,LTD. 副社長
2001 年 溶接カンパニー国際部長