JL次期社長に西松氏、「『ものを言える風土』が必要」

  • 2006年3月1日
 日本航空(JL)は2006年度の役員体制を決定、発表した。1日、国土交通省で会見した代表取締役グループCEO兼社長の新町敏行氏は冒頭、報道される様な一連の社内での混乱について、「お客様、関係者にご迷惑、ご心配をおかけしたことを深くお詫びする」と切り出し、2006年定時株主総会後の新体制では自らが代表取締役を退き、取締役会長を務めることを明らかにした。代表取締役グループCEO兼社長には西松遙氏が就任する。

 新体制では新町氏が代表取締役から外れる。これについて新町氏は「JALは誰のものかを考え、公共交通機関としての役割を果たすにはお客様のもの。安全への使命があり、お客様に選ばれなければならない」という考えから、「社内で内紛をしている場合ではない。JAL再生へ進めていく必要がある」と顧客離れの危機感から自らの退任を決意したことを語った。
 なお、取締役会長に就く新町氏は経済団体や国際航空運送協会(IATA)など社外活動を行う。新町氏は「私に残されたJALグループへの貢献はこういう形。JALグループを良くしたいと思う気持ちは誰にも負けない」と表明。新社長となる西松氏が新町氏にこうした対外的な活動を依頼、西松氏自身は安全体制の確立による信頼回復をはじめ、社内業務に専念する。


▽安全対策は「道半ば」、新町社長

 新町社長は退任の決意を「ブランドが傷つき、収入面でも影響がおよび、信頼回復という点で後戻りできない」と認識し、さらに「1日も早く事態収拾を図らなければならない」状況であったこととした。
 ただし、取り組んできた安全対策については「道半ば」と言及。ただし、役員人事において、安全アドバイザリーグループの提言を受け、安全推進本部をつくり、「現場で安全に直接携わってきた人」(新町氏)である岸田清氏を任命(岸田氏は定時株主総会後に代表取締役専務、安全推進本部長に就任予定)し、中枢となる組織とする。
 新町氏は社長に就任した昨年4月以降について、「現場と経営の距離感を縮める努力をしてきた」と語るが、記者団から「悔しさはあるか」との問いには「無い。お客さまからの信頼回復には、この新たな体制が一番」とも語った。


▽次期社長の西松氏、「『ものを言える風土』が必要」

 次期社長に就任する西松遙氏は、今回の騒動について、「風通しの悪さ」を根源にあると言及。特に、持株会社の日本航空、事業会社の日本航空インターナショナル、日本航空ジャパン等に分かれていることが原因との見方を示す。ただし、10月には完全統合を進める計画にあり、これで「相当、改善される」という。具体的には、「現場の情報が必要となる部署、間接部門に伝わっていないのでは」と語り、安全に関する一連の問題でも「他社に対抗できる技術レベルは備えている。回避出来るものもあったのでは」と言い、密なコミュニケーションの必要性を指摘。「一気に爆発するような体制でなく、日頃から見解の相違も含めて意見交換をする『ものを言える風土』が必要」とも語る。

 また、記者団にライバル全日空(NH)が黒字を計上するなど差がついた理由を問われ、「差がついたのは信頼の点。当面は安全性の向上が基本。それが出来て初めてサービスなど応用の部分が加わってくる」と語り、当面は安全対策を重視する考えを強調。このほかにも、NHに比べ、JLの方が比較的大型の機材を保有していることから、「適合する機材が無く、更新が遅れたこと」という見方で、今後の中型機の機材更新などで経費削減を進める考えも披露した。

 こうした点については、本日予定する中期経営計画で詳細を発表するが、4月1日から1割削減についても、中期経営計画をもって各労働組合との合意に向けた交渉を進める。交渉には現社長の新町氏があたり、「3月31日まで時間があり、精力的に話し合いをしたい」(新町氏)としている。


▽人事、日本航空役員
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