週末特集:トラベルライター宮田麻未レポート、自転車でのワイナリー巡り

  • 2003年11月7日
 先週に引き続き、トラベルライターの宮田麻未さんが消費者の視点から「旅行」を考えていただきます。今日はワイナリー巡りをするために、ちょっと危ない(?)移動方法のご紹介です。「旅行」の楽しさを思い起こさせてくれます。その楽しいツアーを企画するためのヒントをどうぞご覧下さい。 トラベルビジョン編集部

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ああ面白かった!ナイアガラ再発見の旅 PART2
                  宮田麻未
 いつもの取材は「容姿最優先」(?)で協力をお願いするドライバーやカメラマンと一緒に行動するのでレンタカーを使うのですが、今回の「自腹旅行」はあらゆる贅沢を排除。ワイナリー巡りにも、ナイアガラ・オン・ザ・レイク(NOTL)のワイン・ショップから出ているシャトルバスに乗る計画。これでは特定のワイナリーしか行けませんが、ま、仕方がないでしょう・・・。ところが、ピープルムーバーで滝周辺の観光スポットを巡るうちに、窓から「貸し自転車」の看板を見つけたのです。
 「サイクリングでワイナリー巡り!」。たちまち私は、美味しいワインのほんのり頬をそめながら木漏れ日の中を走る自分を想像して嬉しくなってしまいました。


▽ワイナリーへの道は遥か彼方だった・・・
 ナイアガラとNOTLの間は車で20分ほど。川沿いに自転車専用道路もありますし、サイクリングにはベストの距離だと思いました。ところがこの予想はたいそう甘いものだったのです。まず、このナイアガラ・リバー・リクリエーション・トレイルの沿道には、面白いものが多すぎた!いちいち寄り道していたら、いつまでたってもワイナリーにたどりつかなかったのです。
 最初の寄り道は自転車を借りた家から10秒のところにあるグレート・ゴージ・アドベンチャー。滝から流れ落ちた膨大な量の水が、ここでぐっと狭まった川幅に急流となって押し寄せる場所です。川沿いに木造のプロムナードを歩くだけ。12年前に一度取材したときは10分ほどで早々に切り上げてしまいました。この程度の急流なら日本にもあるし、何の工夫もないように思えたからです。
 ところが、川べりに出て驚きました。崖の周辺の木々が色鮮やかに紅葉し、白く逆巻く水とのコントラストがなんとも言えないほど美しいのです。「数千年前、滝はこの場所にあり、だんだん岩盤を削って後退していったのだ」という説明を聞くまでもなく、想像力を心地良く刺激してくれました。見る側の気持ちが違えば、見える風景もまた変るのだとしみじみ思いました。

 もう一つの嬉しい驚きはローラ・セコードの家でした。セコード夫人は、1812年に米国が当時英国領のカナダに侵入しようとしたとき、32キロも歩いて英軍に危険を知らせたという「肝っ玉おばさん」。有名なチョコレートのキャラクターにもなっているカナダの英雄です。このセコード夫人の家が史跡として保存され、アンティークの家具などで当時の様子が再現されています。
 正直言って、米加戦争にそれほど興味はなかったのですが、解説をよく聞くと、この家にはまるで宝石箱のように面白い物が詰まっていました。例えば、暖炉の上にうやうやしく飾られた箱は「ティー・キャディ」と呼ばれ、英国から運んで来た紅茶を入れておくものでした。当時紅茶は大変な貴重品。大きな茶箱はまさにステータス・シンボルだったそうです。茶箱には鍵が掛けられ、その鍵は家の夫人が常時首から下げて守っていたほどでした。
 知的好奇心を適度に刺激してくれる上手な解説、一方的に情報を手渡すのではなく、「一緒に考える」インタラクティブなガイドがツアーに付けば、旅はより奥が深く、変化に富んだものになるのでしょうね。


▽食事と一緒に楽しんでこそワイン
 あちこちに寄り道して最初のイネスキリン・ワイナリーに辿り付いた時には、もうお昼を過ぎていました。空っぽのお腹にワインがジワーっと広がっていきます。一つのワイナリーで試飲をしたら、ゆっくり走って風で淡い酔いをさまし、次のワイナリーへ。プックリとふくらみかけたブドウ畑の眺めも素敵でした。ナイアガラ周辺のワイナリーにはレストランを併設しているところが少なくありません。また、デリを試飲室内に設け、そこでチーズやハム、自家製のパンなどを売っているところも多いようです。サンドイッチなどを選び、食材に合ったワインを相談して決める。ブドウ畑を見渡すテラスやピクニック・エリアにくつろぎ、おすすめのワインでランチというのは楽しいものです。ただし、今回は一人で一本空けてしまうわけにもいかず、少々困りましたが。

 今回訪れたワイナリーの中で特におすすめなのは、2001年にオープンした大規模なワイナリー、ペラー・エステイト。シャトー風の大きな建物の中に設備の整った試飲室、レストランなどが揃っています。ワイナリー・ツアーも手馴れたもので、時期によっては日本語でのガイドも可能だそうです。
 試飲した中では、プライベート・リザーブ・シリーズの1999年のシャルドネが気に入りました。ドライではありますが、のどごしが柔らかく、香りも優しげです。もう一ヶ所、今回の成果はジョセフ・エステート・ワイン。いかにも家族経営らしいおっとりした感じで好感がもてました。ここではフルーツ・ワインがおすすめ。リンゴ酒のアイスワインはシニアの女性に喜んでいただけそうです。


▽ほろ酔いサイクリングに立ちふさがる崖!
 サイクリングでのワイナリーめぐりというアイディアは良かったと思いますが、今回の計画の結論を言うと少々修正が必要でした。気持ちの良いサイクリング・コースをのんびりとナイアガラ方向に戻っていくと、「そろそろ疲れたなぁ・・・」と思うあたりに、のけぞるほどの切り立った崖があるからです。
 お客様におすすめするなら、バスでNOTLまで行き、そこで自転車を借りてワイナリーを巡るようにするか、NOTLで一泊して次の日にナイアガラに戻るように日程を組むべきでしょう。
 崖を登りきった私は・・・コケました。

▽ナイアガラ・オン・ザ・レイク周辺のワイナリー、ホテルなどの情報は下記
のアドレスへ。
http://www.niagaraonthelake.com

▽収穫を待つブドウ畑の景色は
http://www.travel-vision-jp.com
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☆☆☆予告☆☆☆
 来週の最終回は「なんといってもナイアガラは滝!」という方のために、滝周辺のポイントをご紹介します。
 カナダの様々な観光ポイントや暮らしぶりについてはホームページをご覧ください。ツアーの企画などにもお役にたてる記事を心掛けてアップしています。(宮田麻未)

▽宮田麻未さんのホームページはこちら
http://www.canadian-life.com