HIS、2030年営業利益250億円目指す新中計 「旅行依存」脱却を加速
代表取締役社長の澤田秀太氏
HISは2030年を最終年度とする新中期経営計画「Vision2030 BEYOND」を発表した。2030年に総取扱高1兆円、売上高5000億円、営業利益250億円、EBITDA350億円の達成を目指す。一方で、澤田秀太社長は「日本人海外旅行市場はシビアに見る必要がある」との認識を示し、従来の日本発海外旅行を中心とした事業構造から、ホテル、グローバルトラベル、法人事業などを利益の柱とする収益構造への転換を加速する考えを打ち出した。
中計のタイトルに掲げた「BEYOND」には、「BEYOND TRAVEL」「BEYOND JAPAN」「BEYOND HIS」の3つの視点から、旅行会社の枠を超えた成長を目指す思いを込めた。「BEYOND TRAVEL」では旅行を核にホテルやコンテンツなどを組み合わせた新たな価値創出、「BEYOND JAPAN」では日本発海外旅行に加え訪日旅行や第三国間旅行などグローバル事業の拡大、「BEYOND HIS」ではAI活用や新規事業への挑戦を通じた企業変革をそれぞれ表現している。
背景には、日本人海外旅行市場の回復の遅れがある。澤田社長は会見で「日本人海外旅行市場は想定以上に戻り切っていない。シビアにマーケットを見ていく必要がある」と述べた。その上で、「今は旅行事業というキャッシュエンジンがある。このタイミングで次のコア事業を育てなければならない」と語り、旅行事業で生み出した収益を次世代事業へ積極的に再投資する考えを示した。
旅行事業を軸に収益源を多様化
数値目標では、2030年に営業利益250億円を掲げる。このうち旅行事業を中心とするコア領域だけでなく、ホテルやグローバルトラベル、法人事業などの「ネクストコア」、さらに金融、人材、飲食などの「グロース領域」を育成し、利益の約半分をこれらの領域で創出する構想を描く。旅行市場だけに依存しない利益構造への転換が中計の大きな特徴となる。
一方で、旅行事業を縮小する考えではない。日本発海外旅行では「圧倒的ナンバーワン」を目指し、若年層や富裕層への販売強化、高付加価値商品の拡充、オリジナルコンテンツの開発を進める。また、AIを活用した需要予測やダイナミックプライシング、CRMによるパーソナライズ提案などを推進するほか、基幹システムの刷新を進めることで間接部門の工数40%削減を目標に掲げ、生産性向上と収益力強化を図る。
グループ利益の約3分の1を占めるホテル事業では、アパートメントホテルやドミナント戦略の展開を加速し、高収益モデルへの転換を進める。また、海外136拠点のネットワークを生かし、訪日旅行や第三国間旅行、海外法人向け旅行などを拡大するグローバルトラベル事業を強化。グローバル受客拠点は現在の24拠点から50拠点へ倍増させる計画だ。
法人事業では、BTMやMICEに加え、自治体向け事業を拡充する。地域課題の解決や企業の人材不足への対応など、旅行手配にとどまらないソリューション提供を進める方針で、自治体との取引も現在の約300自治体から1000自治体への拡大を目指す。
成長投資では、2027年度から2030年度までの4年間で総額1000億円を投資する計画を掲げた。このうち400億円をM&Aに充てる予定で、旅行事業とのシナジーが期待できる金融、外国人人材、飲食などの事業への投資を進めるほか、AIや宇宙、インターネットなど将来の成長分野へのCVC投資も拡大する。
会見では、旅行会社を取り巻く競争環境にも言及した。取締役の山野邉淳氏は「日本発海外旅行市場シェアを積極的に取りに行く会社は少なく、むしろ空白になっている」と指摘。その上で、旅行事業の競争力を高めながら、ホテルやグローバルトラベル、法人事業を新たな収益源へ育成することで、持続的な成長を目指す考えを示した。
今回の中計では、日本発海外旅行の成長を追求しながら、ホテルやグローバルトラベル、法人事業など収益源の多様化を進める方向性を鮮明にした。HISは2030年に向け、事業ポートフォリオの変革を本格化させる。