西武・プリンスホテルズがエースホテルを子会社化、グローバル展開加速へ

西武・プリンスホテルズワールドワイド(SPW)は9月16日、米国発のライフスタイルホテルブランド「エースホテル」を運営するAce Group International(AGI)の全株式を取得し、子会社化すると発表した。取得はSPWが米国に設立した新会社を通じて行われ、2025年9月中の手続き完了を見込んでいる。日本発のグローバルホテルチェーン構築を掲げる西武グループにとって、エースホテルのブランド力とカルチャーは成長戦略の起爆剤となる。
同発表に関する会見には、西武ホールディングス会長の後藤高志氏、SPW代表取締役社長の金田佳季氏、AGI会長のブラッド・ウィルソン氏、同CEOのクリス・ペン氏が登壇し、事業取得の背景と今後の展望を語った。
後藤氏は会見の冒頭、「今回の事業取得により、西武プリンスホテルズワールドワイドが掲げる"日本をオリジンとしたグローバルホテルチェーン"への道筋が一層確実なものになると確信している」と述べ、AGIとのパートナーシップがグローバル戦略の加速に直結すると強調した。また、エースホテルを訪れた際の印象について、「土地と文化へのリスペクトを感じることのできる、趣向を凝らしたアートや音楽、インテリアが随所にちりばめられた空間」とし、「滞在そのものが旅の目的となる町のシンボルとしての役割を担っている」と評価した。
買収は、SPWが設立した100%出資の米国子会社「Ace Hotels Worldwide Inc.」を通じて実施され、取得額は最大9000万ドル。これにより、SPWの運営施設数は既存の86ホテルにAGIが展開する8ホテルが加わり、合計94ホテルとなる。AGIは、シアトル、ニューヨーク、ブルックリン、パームスプリングス、トロント、シドニー、アテネ、京都に施設を持ち、世界的にユニークなホテル体験を提供してきた。
今回の買収は、エースホテルの持つライフスタイル志向と地域密着型のコンセプトが、SPWの掲げるビジョンと合致したかたち。後藤氏は、「理念が合致したパートナーと手を組むことが、グローバルホテルチェーンの実現には何より重要」と語り、M&Aを今後も戦略の一環として積極的に検討する姿勢を示した。
SPW社長の金田氏は、取得の目的を「出店機会の拡大」「顧客基盤の拡充」「ブランディングノウハウの活用」の3点にまとめた。とくにブランドポートフォリオにエースホテルが加わることで、11ブランド体制となり、オーナーへの提案力と地域展開の柔軟性が飛躍的に向上すると説明した。また、西武プリンスクラブの約252万人の会員基盤にAGIの顧客層が加わることで、クロスセールスや新たな収益機会も創出される見通しとした。
AGI会長のウィルソン氏は、「創業者は日本の文化やデザインへの深い敬意を持っていた」と語り、日本との縁を強調。また、「西武グループとのパートナーシップは、我々のブランドの本質を維持したまま、グローバルな成長を可能にする」とし、同社ブランドの独自性の維持にも配慮があることを明言した。
CEOのペン氏も「エースホテルは、宿泊施設を超えて文化の触媒であることを目指してきた。今回の提携により、我々のミッションはさらに加速する」と述べ、2027年の開業を目途にすでに福岡での新規開業プロジェクトが進行中であることも明らかにした。
SPWでは、2035年までに国内外250ホテル体制を構築することを掲げており、今回の買収はその重要な一歩となる。同社は今後、東南アジアを中心に海外展開をさらに加速させる構えで、SPW既存ブランドにてベトナム、インドネシア、タイなどで開業を予定している。