Tabinaka Summit 2025開催、主要OTAが語る市場の現在地と課題
タビナカ体験価値の向上を目指す観光業界イベント「Tabinaka Summit 2025」が6月30日、都内で開催された。JTB、GetYourGuide、ジェイノベーションズ、羅針盤の4社が共同主催し、訪日旅行市場の拡大と共に高まる「コト消費」ニーズに応えるべく、ツアーオペレーターや体験事業者、OTA、DMOなどが一堂に会した。
全10セッションの内、「主要OTAが読み解くタビナカ体験の最新トレンド」では、Klook、GetYourGuide、ベルトラ、KKday、アソビューの主要5社が登壇し、体験商品の売れ筋傾向から掲載基準、地域コンテンツの課題まで、実務的かつ率直な意見が交わされた。

まず市場の現状や課題については、「一極集中」や「供給の偏り」といった問題が指摘された。Klook Travel Technologyの田中美晴氏は、旅行者の関心が一部の施設や地域に集中しすぎているとし、地域全体での連携による回遊性の向上が不可欠と強調。アソビューの江部隼矢氏は「地方の魅力的な体験の認知が不足しており、ここは非常に伸びしろがある」と述べた。GetYourGuideの仁科貴生氏も「商品供給が需要に追いついていない」とし、人材や移動手段の不足が障壁になっていると分析した。

ベルトラの二木渉氏は、AIを含むテクノロジーの進化がOTAや体験事業者にもたらす変革に言及。検索や認知の在り方が変化するなかで、観光事業者と共にAIを活用し、情報発信の質を高める必要性があると語った。KKday Japanの小川雄司氏も、事業者側を含めたITリテラシーの向上が不可欠とし、デジタル化と持続可能な運営体制の重要性を訴えた。
体験商品の売れ行きについては、「レビュー」の有無が大きな影響を及ぼすとの見解が挙がった。Klookの田中氏は「レビューが20件を超えると予約数が安定する」とし、初期の割引やプロモーションを活用してレビューを蓄積する戦略を紹介した。GetYourGuideの仁科氏も「最初の3件のレビューが重要」と述べ、体験開始初期の動線設計の工夫を促した。
一方で売れにくい商品としては、「補助金依存型」「ターゲット不明確」「一過性の商品」が挙げられた。KKdayの小川氏は「行政の補助金に頼った短期商品は継続性に乏しく、ターゲット不明確なケースも多い」と警鐘を鳴らした。
掲載基準「持続性」と「旅行者視点」が鍵に

セミナー中盤では、地域で造成される体験商品の中でも、補助金により設計された商品の持続性と実効性に関する話題に及んだ。GetYourGuideの仁科氏は、単発で終了する商品はプラットフォームとの相性が悪いと指摘し、継続的にページを育てていくOTAの特性を踏まえた商品設計を求めた。Klookの田中氏も、継続展開による予約とレビューの積み重ねがOTAの醍醐味と言及し、「花火や祭りのような季節商品であっても、継続運用すればページを育ててアクセスを増やすことができる」と説明した。
また、各社は補助事業商品であっても、プラットフォームの基準に照らして適切であれば掲載する姿勢を示す一方で、掲載可否の基準では「継続的な供給体制」のほか「旅行者視点での需要」が鍵になるとした。例として、即時予約対応を取り上げ、リクエスト予約では旅行者の不安が増し、問い合わせも増加するため、オペレーション効率の観点からも即時化の重要性を強調した。
最後に、今後の体験市場の成長に必要な視点として、登壇者からは「AI」「持続性」「共感」「キラーコンテンツの活用」など多様なキーワードが掲げられた。