観光立国基本計画改定に向け課題整理、観光庁が本格議論開始

  • 2025年6月25日

 観光庁は20日、第50回交通政策審議会観光分科会を開催し、「観光立国推進基本計画」の改定に向けた本格的な議論を開始した。政府が掲げる2030年の訪日外国人旅行者6000万人、旅行消費額15兆円という目標の実現に向けて、現状のボトルネックと今後の課題について多角的な意見が交わされた。

 今回の会合では、観光・交通・その他の分野における課題を網羅的に提示。観光分野では、DMOの機能強化、人材や資金の不足、体験型コンテンツの収益性の低さ、ローカルガイドの不足などが挙げられた。また、観光需要の増大に伴う人手不足や施設の生産性の低さ、住民理解の獲得や災害時の情報提供の不備も指摘された。

 交通分野では、空港や港湾の受入体制強化、空港アクセスの混雑緩和、地方空港の利活用促進、幹線鉄道の速達性向上、そしてバス・タクシー運転手の確保難に起因する二次交通の脆弱性が取り上げられた。インバウンド客の地方誘客を進める上で、地方部における交通の空白地帯や情報提供の不足も課題とされた。

 加えて、税関・入管手続きに関する混雑や地方空港での体制整備の遅れ、自然・文化資源の活用不足も課題として挙がった。特にクルーズ船寄港時の混雑やインバウンド対応の未整備、国内旅客船事業者の観光対応力不足が地方誘客の妨げになっているという指摘がなされた。

 委員からは、これらの多様な課題について、優先度に応じて整理すべきとの意見や、持続可能な観光を支える財源の在り方に関する議論も展開された。消費税免税や宿泊税、旅客税の活用による財政支援の必要性を指摘する声や、休暇の分散、アウトバウンドの振興、MICE関連の人材不足といった個別の課題も多く出された。

 今後は、7月25日に旅行業界や宿泊団体など関係団体からの意見聴取を行い、その後も複数回の審議を経て2026年3月の閣議決定を目指す。観光庁は、各分野における課題の抽出と施策の方向性を議論しながら、目標達成に向けた計画の具体化を進めていく構えだ。