ラテンアメリカで"100年続く日系財閥"を目指す-Encounter Japan西側赳史氏が挑む、食・広告・観光の三軸戦略

  • 2025年4月18日

 「日本とラテンアメリカをもっと深く、面白くつなぎたい」。そんな想いを胸に、メキシコ・コロンビアを拠点に飲食・広告・観光の三事業を展開するのが、Encounter Japan代表・西側赳史氏だ。失敗から学び、ネットワークを地道に築き上げてきた10年の軌跡の先に、2025年には訪日旅行事業「Encounter Japan Travel」を立ち上げた。ラテンアメリカで根を張り、現地とともに成長していく、短期的な成功ではなく、世代を超えて続く存在を目指すその姿勢には、西側氏ならではの哲学がにじむ。ラテンアメリカの魅力、訪日市場としての可能性、そして異文化と人をつなぐ本質とは何か、西側氏のリアルな言葉に耳を傾けたい。



-まずは、西側さんのご経歴からお聞かせください。

西側 赳史 氏(以下敬称略) 現在36歳です。神戸には12歳から23歳まで住んでいましたが、実は親が転勤族で、小学校時代だけで4回も転校しています。千葉、大阪、神戸といろんな場所に住みましたが、神戸を拠点にしたのは自分にとって自然な流れでした。学生時代はサッカー一筋でしたが、20歳のときにアメリカへ渡ったのが人生の転機となりました。当時はピザ屋でアルバイトをしていたのですが、そこでの同僚たちを通じてラテンアメリカに強く惹かれるようになったんです。

 その後、大学を休学して1年半ほどバックパッカーとして中南米を巡りました。帰国後は双日株式会社に入社し、自動車部門でベネズエラやパラグアイなど中南米を担当するようになりました。ただ、もともと「ラテンアメリカと日本をつなぐ仕事がしたい、自分で会社をやりたい」という想いがあったので、2014年に退職し、そこからメキシコと日本を行き来する生活が始まりました。

 現在、グループ全体では約100名のスタッフを抱えており、そのうち日本人が10名、残りはメキシコ人やコロンビア人などの外国人スタッフで構成されています。事業は観光・広告・飲食の三領域にまたがり、私自身は年の10ヶ月をメキシコや南米各地で過ごしています。

-起業当初はどのような事業に取り組まれたのでしょうか?

西側 最初に挑戦したのは飲食事業です。元々芦屋でバーテンダーのアルバイトをしていたこともあり、お酒や人と話すことが好きだったので。コロナ禍でボコボコにやられた経験を経つつも、現在はメキシコに3店舗、コロンビアに1店舗のレストランを展開しており、有能な日本人シェフたちを中心とした会社のメンバーがオーセンティックで良質な和食を提供しています。そのうちのひとつが、大手ゼネコンの株式会社フジタが2020年1月に開業した250室規模の大浴場付き日系ホテルの中にあるGOEN FUJITAYAです。元々はホテル内飲食施設のコンサルティング業務として関与し始めたのですが、2021年11月からはテナントとして運営に参画しています。

 観光ビジネスの最初の試みは、京都のドキュメンタリー番組を毎日放送さんから購入し、メキシコのテレビ局で放映するというものでした。番組にあわせて「日本へ行きませんか?」という旅行広告を流し、現地の旅行代理店とレベニューシェアするモデルでしたが、資金不足と、自身の経験・能力不足で頓挫。しかしこの経験をきっかけに、テレビ局などとのネットワークが生まれました。

 そして、2021年からは日本政府観光局(JNTO)がメキシコ事務所を開設したことをきっかけに、メキシコを中心とした訪日プロモーションにも本格的に参画。現地での観光関連情報の発信や、旅行会社とのネットワーク形成、イベントの協力などを通じて、訪日マーケットにおける中南米のポテンシャルを肌で感じてきました。この経験が、2025年1月に訪日旅行専門部門「Encounter Japan Travel」を立ち上げる後押しになりました。

-別領域の事業も結果的に様々な連携がされているのですね。

西側 Encounter Japanの特長は、飲食・広告・観光という三領域が有機的に結びついている点です。例えば飲食店で行うマグロの解体ショーイベントでは、その場で旅行サービスの紹介ブースを設け、リアルな接点から旅行相談につなげることもあります。

 広告事業では、トヨタ自動車さんの新工場開設時の密着ドキュメンタリー制作をはじめ、食品メーカーの中南米進出支援や現地PR活動など、多岐にわたる案件に携わっています。また、日本の酒類や食材の輸入販売にも取り組んでおり、アエロメヒコ航空への日本酒の卸販売や、カンクンのホテルグループへの日本米の供給など、食を通じた日系ブランドの浸透にも力を入れています。商談会の開催や流通ネットワーク構築など、マーケティングと実行支援が一体化したプロジェクトが増えており、地域に根ざした総合的な広告・プロモーション支援を強みにしています。