年間集客20万人、単なるウォーキングツアー?「街道歩き」が人気の理由とは-旅人企画 永島孝志氏

-リピーターを作ることを重視されている訳ですね。

永島 はい。旅行会社に街道歩きを提案する時も、ウォーキングツアーとして売りにするのではなくコミュニティを提供するものだと説明していて、例えば東海道の場合は2年半掛けて行われますが、毎月みんなと顔を合わせて楽しむ。そのきっかけが東海道を歩くというわかりやすい目的なだけであって、この意識がリピートに繋がります。

 この場合大事なのが初回の参加を促すアプローチ。よく旅行会社からは2年半掛かることに関して心配されることが多いですが、実際は行きたくなれば2年でも10年でも参加してくれます。初回参加を促すため無料の旅行説明会を開いたり、また東海道歩きの場合は初回を日帰りの現地集合現地解散にしています。バスも手配せず、初回のみ非常に低価格に設定していて、旅行の「試食会」と捉えていただければ。当然ですが旅行って試食ができない。でも、この街道歩きの場合は初回を試食会にできて、初回で収益はほとんどなくても、その内の数割が最後まで参加してくれるようになる訳です。街道歩きの強みは広告が初回の分だけで済むことで、仮に25回分のツアーだとしても1回の広告で完結するところです。大きいのはこのリピーターが次の街道歩きに参加される際、目的が明確な場合は最初から高額商品で集まるケースも出てきます。

-参加時のアプローチはなにかございますか。
永島孝志氏

永島 ガイドが帯同するのはもちろんですが、他に自由に行動できるスタッフを配置しています。そうすることでその都度参加者の状況など見ながらサポートをすることができますし、あとはツアー中に立ち寄るお寺などへは日頃からご挨拶や掃除をお手伝いしていて、そうすると我々のお客さんの場合は本堂を開けてくれたりと普段体験できないサプライズに繋がります。

 演出という部分で以前実施したものでは、完歩後に都内を観光している時に街の大型ビジョンにこれまでのツアーの様子をスライドショーとして映したことがあって、これは非常に喜んでいただきました。これはもちろん費用は掛かりますが、その参加者が他の街道歩きへ続けて参加いただくなどリピートへ繋がりました。

-現在大手中心にDPが主流となっている現状についてはどう感じますか。

永島 ネット環境がここまで整うと、旅行会社よりお客さんの方が詳しいなんてこともしばしばで、この状況では選択肢が豊富なDPが好まれるのは当然の流れだと思いますし、旅行会社にとっても一番効率が良いと思います。

 現在のPKGの問題は、結局DPのような行程になってしまっていること。これでは勝てないし売れない。売れたとしても2度目には繋がりにくい。DPにはできない特別な体験がないと販売やリピートには繋がりません。

-中小の旅行会社ではPKG販売やリピーター獲得に苦慮されているところも多そうです。

永島 よく陥りやすいのが「なんでもできる」ことを売りとすること。なんでもできるでは何にも勝てない。一つでも良いから武器を持つことが重要で、それが例えば宴会をセッティングさせれば一番でもいいですし、どこにも負けないものが一つあるという状態を作ることが中小の生き残りの方法だと思います。

 人口減少が続く時代に大量集客ができないなかで、一部の顧客に掘り下げた新しい提案を行う。我々の街道歩きでも20kmや30km歩くウォーキング愛好者ではなく、寧ろ10kmも歩けるどうかという方々に対して道中で新しい楽しみを提案しています。