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宿泊施設と地域がともに成長する方法は?訪日受入のカギは?-日本宿泊ダボス会議

  • 2023年3月23日

地域一体のリゾートで滞在日数UP
食や決済でもインバウンド対応を

日本宿泊ダボス会議はハイブリット開催された

 

 宿泊施設活性化機構はこのほど、第7回日本宿泊ダボス会議を開催した。宿泊施設や観光関連事業者、関連団体などが参加して業界の知識共有と討議をおこなうイベントで、今年は「収益のために地域と一体にならざるを得ない宿泊施設~インバウンドの回復と分散型ホテルの発展を念頭に~」をテーマに開催。宿泊施設が地域創生に果たす役割やインバウンド対応などについて登壇者が議論した。

 最初に開催された「基調講演1」では、日本旅館協会会長で鶴雅グループ代表の大西雅之氏が「私が考える2030年を見据えた宿泊業界の進化」をテーマに講演した。大西氏はまず「宿泊施設は地域に生かされており、地域とは運命共同体」という考えが根底にあることを説明。そのうえで2030年を見据えた宿泊業界の進化として3つの項目を挙げた。

 1つ目は「郷土力を磨き宿も町も作品づくり」。大西氏は「作品はコストという概念を変える。旅館のカーペットを張り替えるのはコストという考え方もあるが、もっとよい作品のために投資すると考えるとマインドが変わる」と語った。

 そのうえで「郷土力を磨き、地域と共に成長する100年ブランドを作り上げ、社員が誇りに思い、お客様に愛され、社会から信頼される企業を目指す」という鶴雅グループの経営理念を改めて紹介。「地域の持っている大切な財産を磨いて地域と共に成長する。1つの施設が良くなっても弱いが、土台となる町のブランドが上がれば皆も良くなり、自分の土台もしっかりする」と語り、宿泊施設と町の共生が不可欠であることを強調した。

 2点目は「サステナブルな新しい旅のスタイルの提案」で、大西氏は地域と一体となって取り組むべきものであるとし、阿寒湖温泉の例を紹介した。阿寒湖温泉では「一泊旅行でない滞在型」をテーマに「アイヌ文化に彩られた国際リゾート」を目指しているところ。大西氏は「内部で競争するのではなく、地域を一体リゾートとして経営する」ことが重要であるとし、入湯税などを活用して町づくりを進める体制を整えてきたことを振り返った。

 具体的にはインバウンドを呼び込むプロジェクトとして、アイヌをテーマにした体験型ナイトウォーク「カムイ・イルナ」や、アイヌ古式舞踊をアレンジした演目「ロストカムイ」を展開。今年の2月には貸切ワーケーション・ホテルスペース「阿寒テラス」を開業しており、同グループが実施中の観光人材養成講座で活用しているほか、スタッフの交流の場としても利用されているという。

鶴雅グループ代表の大西雅之氏

 3点目は「コロナは改革のチャンス 変われるものが生き残る」。大西氏はコロナ禍の3年で観光業界から多くの離職者が出るとともに志望者も減ってきたことを説明し、「業界が信頼を失っている。それを取り返さないことには復活はない」と強調。そのためには宿泊産業の給与水準をあげる必要があるとした。

 同氏によれば、2022年度8月のデータで宿泊業の年収の全国平均は315万円。一方旅行業界は337万円、サービス業全体の平均は366万円だった。大西氏は「サービス業の平均までいくには16%上げる必要がある」としつつ、地方格差あることを踏まえ「今までやってきた人件費率を15、16%あげれば」と提案。同グループでは業務改革をしながら給与体系を見直し、3年間で15%アップ達成の目標を掲げていることを説明した。1年目は「給与体系を抜本的に見直し5%アップした」といい、残りの2年で5%の増収と、14施設の人員配置を適切化することによる5%の人員削減で目標達成をめざすという。

 大西氏は目標実現のためには宿泊単価を挙げる必要があるとし、「一部の宿泊施設はすでに可能だが、業界全体で上げていくにはサービス料を復活させたい」と持論を展開した。サービス料の復活は「一長一短」だが、大西氏は「世界的にチップは当たり前であり、大手のホテルはサービス業をとっている。なぜ旅館は取れないのか」と疑問を提起。「宿が旅の目的になり、我々はメーカーの立場になってきていると考えていると、決して不可能なことではない。ぜひサービス料の復活を皆で議論してみたい」と呼びかけた。

 また、海外人材の活用や、DX投資による生産性向上と作業の効率化などの取り組みも重要と指摘。政府系金融機関が実施する、新型コロナ対策のための資本性劣後ローンの導入や、経済産業省の事業再構築補助金をはじめとした政府の補助金を活用し、積極的に施設に投資することでポストコロナに備える必要性も説いた。

 最後に大西氏は鶴雅グループでの取り組みを紹介。JNTOが2023年度の重点施策として掲げるアドベンチャートラベルへの投資を強化しており、4月にアドベンチャーツーリズムの拠点として「洞爺湖 鶴雅リゾート 洸の謌」を、8月には網走市に「オホーツク・イズバ」と「網走Adventure・Base SIRI」を開業する予定。2024年には支笏湖温泉に「支笏湖LOOPs」の開業を控えているという。支笏湖LOOPsについては施設内で夕食を提供せず、温泉街の店などを活用してもらう予定。大西氏は「北海道はバフェ形式の食事が多い」とし、連泊する宿泊者に対し多様な選択肢を提供していく考えを示すとともに「小さな温泉街のパブリック共用という考え方で進める」と地域との共生をアピールした。

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