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宿泊施設と地域がともに成長する方法は?訪日受入のカギは?-日本宿泊ダボス会議

  • 2023年3月23日

地域一体のリゾートで滞在日数UP
食や決済でもインバウンド対応を

アクセシブルな施設で訪日受け入れを、選択肢の多様化や独自性も重要

日本インバウンド連合会理事長の中村好明氏

 日本宿泊ダボス会議では「宿泊業が使うべきインバウンド対応策」と題したシンポジウムも開催し、日本インバウンド連合会(JiF) 理事長の中村好明氏とJALF理事でやまとごころ代表取締役の村山慶輔氏が登壇して議論した。中村氏はインバウンドの受け入れにおいて、アクセシブルツーリズムの重要性を強調。交通面などのアクセスだけでなく、食やダイバーシティなどを含む旅行全体をアクセシブルにするという考えのもと、多様な人々を受け入られるよう取り組むことはビジネスの機会創出につながるとし、「アクセシブルツーリズムに本格的に取り組むことは宿泊施設の差別化になる」とアピールした。

 また、宿泊業界で課題となる宿泊単価を上げるための取り組みについても言及。一例として、福岡県の「柳川藩主立花邸 御花」を挙げた。御花は宿泊単価をあげるため、柳川藩が能をサポートしていた藩だったことから「殿様屋敷にて能を鑑賞」をテーマにした付加価値のあるプランを高単価で提供して成功を収めている。中村氏は「宿泊の幅広いモデル。宿泊だけでなくオンリーワンの体験プランを出した」と評価した。

やまとごころ代表取締役の村山慶輔氏

 一方村山氏は宿泊単価を上げる方法として、オプションプランを積極的に展開することを提案。アクティビティに加え、食事でもグレードアッププランを設定するなど「値上げではなく選択肢を増やすべき」と話した。加えて、連泊やリピーター増に向けた取り組みについても言及。連泊については客単価を上げるために3泊すれば1泊無料にするなど「数字を追ったうえで1泊でも多くしてもらうための割引・メリットを提供できれば」とした。リピーターについてはインバウンドはリピートしにくいとしながらも、リピーター割引などの特典対象者を友人まで拡大するなど方法はいろいろあるとし、「ファンづくりに生かすと違ったプロモーションの仕方ができる」と示唆した。

 また、村山氏は決済方法についても触れ、東南アジアをはじめ各国独自のスマホ決済方法などにも対応できるようにすることを提案。さらに海外の中小旅行会社と取引する際、与信管理の関係でデポジットが必要の場合は時間がかかるが、DX化によりクレジットカード決済できる仕組みを整えれば取引しやすくなることを説明し、「カード会社が与信を担保してくれるし、富裕層を扱う世界の中小旅行会社とダイレクトに契約できる。DXはロボットやAIだけでなく、決済にも目を向けるとインバウンド誘客につながる」と語った。

 シンポジウムでは地域と宿泊施設の関わりについても話された。中村氏は地域に根差したコンシェルジュ機能の充実がリピーター化につながるとし、「お客様が相談すると特別な計らいができる機能を宿泊施設が持つことで、地域からするとホテルが町の財産にもなる」と話した。

 村山氏は地域旅館7社が出資して設立した「DMC天童温泉」を紹介。国の補助金をうまく活用しながらアクティビティの開発による周遊促進や共同仕入れによる単価の値下げに取り組んでいることを説明した。現在は連泊日数を1.5泊から1.8泊に増やすことを目指しているといい「地域全体で増やすだけで年間の売上が4億円変わる。そういう共通目標を持って取り組むのはすごいこと」と評価した。

 一方で、こうした取り組みについては地域全員でやることは難しいとし、「重要なのは地域を良くしたい、地域があってこそ自分の場所だという人が3人集まれば動くということ。足元が固まって本業が回っている経営者や支配人が地域に目を向け、アイデアを出して実行していくことでは地域全員を巻き込まなくてもできる」とした。

 また、同氏はインバウンドに注力しすぎることに警鐘を鳴らし、「ベースがあった上でのインバウンド。インバウンドに取り組むことは日本人もプラスになる」とアピール。「インバウンドだけでなく日本人対応にもつながると考えればモチベーションが上がるのでは」と話した。