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OTOA大畑会長、海外旅行需要は戻れども海外旅行ビジネスの回復には疑問、コロナ禍4年目ではなく新たな1年目のスタートへ-新春インタビュー

 観光産業の中でもコロナ禍からの需要回復が最も遅れる海外旅行業界。それでも海外旅行への欲求は市場で高まり今年は海外旅行復活が期待できそうだ。ところが、その旅行欲求が実需につながるのを妨げる多くの課題が存在する。海外旅行ビジネスの最前線に立つツアーオペレーターの視点で見たリアルな課題について日本海外ツアーオペレーター協会(OTOA)の大畑貴彦会長に語っていただいた。(聞き手:弊社代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人 岡田直樹)

大畑氏

-コロナ禍が始まってからの3年間を振り返っていかがですか。

大畑貴彦氏氏(以下敬称略) まずは我々のビジネスと海外ツアーオペレーターが被った痛手の大きさです。海外ツアーオペレーターのビジネスにとってコロナ禍は言うまでもなく圧倒的なマイナス要因でした。コロナ禍が4年目に入った現在もリスタートできずにいるのが現実です。

-同じ旅行業界でも旅行会社と海外ツアーオペレーターとでは状況が異なりますね。

大畑 大手旅行会社のなかには過去最高の収益を出した企業もあると聞きます。本業以外で潤った旅行会社もあるわけです。ところが、そのような恩恵を受けられない海外ツアーオペレーターにとっては、たとえば政府では新規事業の開拓支援がありましたが、実際に上手に活用するにはハードルが高かったのが現実です。

 これはツアーオペレーターに限らずですが、旅行業界でコロナ禍中に支援を活用して新規事業開拓に取り組んで上手くいった事例をほとんど聞きません。新規事業開拓という名のもとで、借金だけが膨らんでしまった企業も少なくないはずです。

 いま思えば、コロナ禍1年目に、過去を1回ご破算にするくらいの解体的な出直しをしていた方が、この3年間が意味ある時間になったのかもしれません。政府には、アウトバウンド・インバウンドなど業態毎に、また大・中小企業など会社の規模に応じてきめ細かな対策を講じていただきたかったです。

-2023年の1年間にどう向き合っていきますか。

大畑 いずれにしても2023年がコロナ禍の4年目になってしまえば本当におしまいです。そうではなく、新たな1年目としての2023年を、どうビルドアップしていくかを考えていかねばなりません。それによって働く方々の意識も業界の雰囲気も、旅行者のマインドも明るく変えていく。そんな姿勢が求められているはずです。

-反転攻勢に出るためには、どうしたらいいのでしょうか。

大畑 海外ツアーオペレーターの立場として言えば、グローバルスタンダードからかけ離れてしまった日本的な商習慣を改めることから始めなければどうにもなりません。ツアーオペレーターや現地サプライヤーへの支払いに時間のかかる日本の商習慣がグローバルスタンダードに馴染まないことは、インバウンドも扱う旅行会社なら十分に承知しているはずです。日本の商習慣にはもう付き合っていられないと考え、あからさまに「日本からの旅行者はもういらない」と言ってくるデスティネーションやサプライヤーもあります。

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