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OTOA大畑会長、海外旅行需要は戻れども海外旅行ビジネスの回復には疑問、コロナ禍4年目ではなく新たな1年目のスタートへ-新春インタビュー

-大畑会長は支払いの問題について以前から指摘し続けてきましたが、なかなか変わらないのが実態ですか。

大畑 最近は旅行会社や日本旅行業協会(JATA)がようやく耳を傾けてくれる場面が増えてきました。これはOTOAの会員側にも問題があります。我々の営業担当者は「他社は待ってくれるのにおたくは待てないのか」と言われればついつい「待ちます」と言ってしまいがちです。

 結果的に、支払いについて筋を通した会社が仕事を失う可能性があることは否めません。ゲリラ的に立ち回り、うまい汁を吸う同業も必ず出てきますが、海外ツアーオペレーター側が足並みを揃えられれば、大きなうねりになって事態を改善していけると信じています。

-世界的に見ると、コロナ禍を経て仕入れも支払いも早まっていく傾向にあります。

大畑 フルデポジットや100%のキャンセルチャージはもはやグローバルスタンダードです。仕入れ競争も世界規模で激化しています。

-日本の海外旅行需要は回復しているのか、回復しているなら2023年はどのくらいまで回復すると見ていますか。

大畑 今年の観光需要はしっかり戻ってきています。2023年は需要だけを見れば2019年の7割ほどまで回復すると見ています。しかしこれはあくまでも需要そのものに関してです。実際の海外旅行ビジネスは2019年比で40%から50%程度にとどまると予測しています。

-需要は7割まで戻っても、ビジネスがそれ以下に留まるというのは、どういう理由ですか。

大畑 1つには、需要があっても燃油サーチャージや円安に阻まれ需要が顕在化しないことです。もう1つが、先ほどから指摘している日本市場としての仕入れ力低下です。需要があって海外で受け入れを確保しようにも、供給側が応じてくれない状況が考えられます。そこが大きく影響するでしょう。

-となると2023年も大きな期待は抱きづらいと。

大畑 そういうことです。しかしインバウンド需要の回復が海外旅行を後押しする可能性があるとも見ています。コロナ禍前のようにインバウンドが動き出すとどうなるか。現在は宿泊施設を含め国内旅行客に依存しているサプライヤーの動きも変わるでしょう。

 宿泊施設をはじめとするサプライヤーは人手不足が続いていますから、限られた供給力を有効活用しなくてはなりません。料金的にも国内客と遜色ない訪日客が戻れば、国内サプライヤーがインバウンドに舵を切っても不思議はありません。そうなれば国内旅行客用の仕入れは細ります。結果的に、旅行をしたい消費者は国内旅行から海外旅行にシフトせざるを得ない状況になるかもしれません。

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