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旅行会社の数字への意識、変えるなら今-RT Collection 柴田真人氏

数値目標を伝えることの重要性

 なぜこの質問をしたかというと、旅行会社ではデスティネーションに対しての数値目標はあっても、各サプライヤーに対しての数値目標やその意識がとても薄いと感じているからです。例えば、サプライヤー側から旅行会社へ契約料金を出す際に、どれくらいの送客が見込めるのか、またはどれくらいの販売目標を立てることができるのかを尋ねてみると、企画担当者あるいは仕入れ担当者は「やってみないとわからない」、「具体的な数字はわからない」と答えることがよくあります。これは旅行需要のあった2019年以前でもよくありましたし、私自身も仕入れ担当者の時に「できるだけやってみますけど、やってみないとわからないですね」とサプライヤーの担当者へ伝えたことがあります。今思えば、個人的にどこか逃げ道を作っていたんだなと感じています。

 この背景には、旅行会社側は契約料金がないとツアーを作らない、サプライヤー側は契約料金を出すことは実績が必要というように、そこには大きなギャップがあり、そのため旅行会社側で具体的な数値目標を言語化できない、そして「やってみないとわからない」という習慣があると思っています。もちろん販促なんてものは実際やってみないとわからないのですが、数値目標を言葉にするというのはとても大事で、数値目標のない販促は結果が伴わないことがほとんどです。

 サプライヤー側の視点で言うと、契約料金を出す=実績が必要となるため、旅行会社から「半期で〇〇人送客します」や「上期は〇〇ルームナイト目標でやります」みたいな言葉が出ると共に頑張ろうと思えます。契約料金を出したにもかかわらず半期や年間を通して実績が伴わないと、サプライヤー側のデータベースでは「この旅行会社は数が出ない」というステータスで残ってしまい、次年度の契約料金を出すかどうかは要検討となってしまいます。

 ツアー造成や企画が再開する流れがある今、契約料金の仕入れする際に各サプライヤーに対して数値目標を言葉に出してみましょう。今はマーケット状況が非常に難しいですが、その数字がたとえ小さかったとしても、サプライヤー側は旅行会社の数値目標の言語化を期待しています。

柴田 真人 / Masato SHIBATA
大学生時代にオーストラリアのタスマニア島で過ごし、旅行会社に就職。15年間の旅行会社勤務時代には主に東南アジア方面の仕入れや企画に従事。また、フィリピンでの5年7ヵ月間の海外赴任を通して、アウトソーシング事業の立ち上げからインバウンド事業における現地支店の立ち上げ及び日本マーケット初のチャーター便運航のプロジェクトなどを経験。その後、2018年に合同会社 RT Collectionを設立。